続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜

冬宮(ふゆみや)さーん」

「はいっ」

「パンの品出しお願いできる?」

「大丈夫です」 

鈴木店長に呼ばれて、私は、パンの陳列棚の前で重ねられたトレイから、パンを賞味期限が早いものから前に陳列していく。

胸元には、『冬宮』と書かれた名札を付けて、私はオレンジ色のエイトイレブンのジャンパーを身につけている。

「まさか、冬宮さんが、エイトイレブンでアルバイト経験があったなんてね、すごく助かるよ」

鈴木店長は、垂れた目尻を優しく、さらに下げた。

「本当、奇遇です。それに、こちらこそ、お店の2階に住まわせて貰った上に、此処で働かせてもらって、本当に有難う御座います」

「いやいや、こちらこそ、もうすぐ予定日なんで助かるよ。本当は店を一時的に閉めようかなとも思ってたんだけど……金銭的にね」

鈴木店長が、親指と人差し指で輪を作りながら、肩をすくめた。

「えと、やっぱり、出産後は、お金……結構かかりますか?」

「そうだねー。オムツ代だけでも結構かかるし、肌着や洋服、赤ちゃん用洗剤、シャンプー、数え上げたらキリがないかな」
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