続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「梨花ちゃん、学校終わったんだね」 

「はい、今日もぼちぼち頑張りまーす」

学生だという梨花は、私より1時間遅く出勤してくる。

「冬宮さん、梨花ちゃんね、シンガーソングライター目指して、音楽の専門学校に通ってるんだよ」

「え!すごいですね」

「やめてくださいよー、まだヒヨッコなんで」

梨花が、少しだけ頬を、染める。

「もしデビューしたら、此処でバイトしてた事テレビで話してくれよ。ってことで、梨花ちゃんが来たから、俺は、休憩いくね」

鈴木店長は、うきうきと事務所兼休憩室に向かい、出てくると、その手には煙草が握られている。

「鈴木店長、やめられないんですねー煙草」

「嫁さんと同じこと言わないでくれよ」

鈴木店長は、ボリボリと頭を掻きながら、店の外へと出て行った。

「やれやれ、店長も尻に敷かれてるからなぁ。あ、品出し手伝うよ。これ出すね」

梨花が、指差しているのは、店頭陳列用の雑誌が入ってる段ボール箱だ。

「あ、でも梨花さん、それ重いから」

「こらこら、妊婦さんは、気を使わず、人からの親切だけを貰っておけばいいの。お腹の赤ちゃんの為にだけエネルギー使ってもらわなきゃ。あと、梨花でいいよ、もちろんタメ口で宜しく」

梨花は、白い歯を見せてケタケタ笑うと、段ボールから、雑誌を取り出して、陳列していく。

「ありがとう……梨花、ちゃん」

咄嗟に『ちゃん』をつけた私に、梨花が、オレンジの唇をもちあげた。

「あはは、こちらこそ、宜しくね。美弥ちゃん。じゃあ、やりますかね!」

梨花が、力瘤を作ってニッコリ笑った。

< 232 / 262 >

この作品をシェア

pagetop