続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「はい。もう15時なのに、どうせまたお昼食べてないんでしょ」

「実花子も忙しくて食ってねぇくせに」

「まあね。颯の好きなトンカツ弁当買ってきたわよ」

実花子が、俺のデスクにトンカツ弁当を置き、自身のオムライス弁当をソファーの前のガラステーブルにおくと、リモコンでテレビをつけた。

辛気(しんき)臭いからテレビつけとくわね、私も一緒に食べてあげるから、早く颯も食べて」

「俺と食べるなら、北沢と食ってやれば?」

「ばかっ。颯が一人にしてたら食べないから、わざわざ此処で食べるんでしょうが」

俺は、思わずキョトンとした。実花子から、馬鹿なんて言われるのは、初めてかも知れない。

テレビからは、夕方から夜にかけての天気と気温をキャスターの女性が、にこやかな笑顔を向けながら、どこかの駅の前から中継をしている。

「実花子、変わったな」

「ちょっと良い意味よね?」

「もちろん」

実花子の子供みたいな拗ねたような顔に、思わず俺は笑った。

笑ったのは、いつぶりだろうか。

「千歳の影響かもね、ちゃんと言わなきゃ、千歳に意地悪ばっかりされるからっ」

口を尖らせながらも、実花子は、俺と付き合って位た時よりも、はるかに幸せそうな顔をしている。

「それはそれは、ご馳走様」

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