続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「別にっ、惚気(のろけ)てる訳じゃないからっ」

実花子は、真っ赤になりながら、俺から視線を逸らすと、テレビを見ながらオムライスを食べ始めた。

俺も割り箸を割ってトンカツに齧り付く。

テレビからは、最近SNSで人気だとかいうシンガーソングライターの歌が流れてくる。

(バラードか……)

なかなか結ばれない男女の恋をテーマにした歌詞が、やけに胸に響く。

「私、この曲好きなんだよね、足立京の新曲、『オリオンの夜に』。冬にピッタリのラブバラードなの」

実花子の声に、俺は、トンカツを飲み込みながら、ふと、その名前を反芻した。

「あだち、きょう?……あれ、どっかで」

「え?何?会ったことあるとか?」

「何か聞いたことあんだよな、どんな奴?」

「あ、颯、丁度、アップで映るわよ」

見れば、金髪で耳にピアスが3つ付いた、長身の男がギター片手に、叙情たっぷりに歌い上げている。

俺は、箸で摘んでいたトンカツを落っことした。
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