続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
一瞬目を瞑ってから、目を開けると、ペンギンのぬいぐるみと視線が、かち合う。

「この、ぬいぐるみ……」

颯と初めて行った動物園で、颯が、プレゼントしてくれたものだ。

「雛は、夫婦で育てんだろ」

「颯……どうして分かったの?」

颯は、ジャケットの胸ポケットから、妊娠検査薬を取り出して振って見せた。

「あ……それ」

「美弥の忘れもん。てゆうか、何で言わねーの?俺が、ガキ喜ばないとでも思った?」

颯が、私の頬を大きな掌で左右から摘む。

「ペンギンみてぇ」

ケラケラと少年みたいに笑う颯に、顔が熱くなる。

「ひゃやて……やめ……」

「やめて欲しかったら、マジで二度と、どこもいくなよな……ったく、人の気知らねぇでさ」

颯は、拗ねたように、切長の瞳をキュッと細めると、私が目の前にいることを確かめるように、私をそっと抱きしめた。颯の鼓動が、とくん、とくんと聴こえてくる。

「すっげぇ会いたかった……もう何処にも行くな」

「ごめんなさい……」

気づけば、颯の胸に顔を埋めていた。

もう二度と離れたくない。

もう颯の手を離すなんて、きっと一生できない。
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