続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「あんま、無理すんなよ」

「ふふっ、でも社長が、子供達の面倒見てくれるから、本当に助かってるの」

康二の孫煩悩ぶりには、俺すら驚いた。

俺達の結婚を認め、子供が産まれてから康二は変わった。安堂不動産の経営諸々の権利を、俺と麗夜に平等に分けると、社長とは名ばかりで、ほとんどの時間を応接室で、颯斗と美優と一緒に過ごしてくれている。


「あそこまで、孫を溺愛するとは思わなかったな」 

「だね」

美弥が、幸せそうに笑う。

美弥が、俺の隣で幸せそうに笑う度、俺の心は幸福で満ち溢れていく。

「もうー、パパもママもおはなしおわり」

颯斗が、痺れを切らして、不貞腐れている。

「みゆも、パパきらいー」

美優が、プイッと俺から顔を逸らして見せる。

「おい、美優。マジで美弥とおんなじ顔して、嫌いとか言うな、へこむだろっ」

美弥が、俺と子供の会話を聞きながら、クスクス笑う。

「なぁ、美弥」

「どしたの?」

「美弥が、チューしてくれたら起きる」

俺は、寝転がったまま、頬を指差した。

「颯っ、子供達の前だよっ」

美弥が、慌てた様子で、ベッドサイドに駆け寄ってくる。

「ねぇ、ちゅーってなに?」

切長の瞳を細めながら、颯斗が、俺の上に跨った。

「みゆにもおしえてー」

美優が、颯斗の真似をして、更に俺に跨ってくる。

「お前らには20年早いんだよっ、3歳のガキが」

それぞれの小さなおでこをツンツンと突ついてやると、双子の我が子達は、キャハハと笑って、俺の上で飛び跳ねた。

「だめよ、パパの上で飛び跳ねちゃ」

美弥が、颯斗を下ろしてから、美優をベッドからそっと下ろしてやる。

「みゆ、あっちで、かくれんぼする?」

「はやとが、おにね」

小さな足音が、跳ねるように遠ざかっていく。

俺は、するりと美弥の首筋に腕を回した。
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