続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「颯が変わったの……あの子のおかげかもね」

「え?」

「別に……あんな子に負けたとか思ってないからっ、ただ……颯が」

「俺が、何?」

実花子は、少し躊躇うような素振りをしたが、小さな声で言葉に吐いた。

「女の子ことで、一喜一憂したり、一生懸命になったりするの初めてみたから……それだけ」

実花子は、ピンヒールを鳴らすと、パタリと扉を閉めて出て行った。

「変わったのかな……俺」

確かに、実花子と別れてからは特に、仕事の合間に適当な女を呼び出して抱ければ、それでよかった。俺自身、後腐れのない身体だけの適当な関係を求めていたから。

きちんと結婚というモノに、初めて向き合ったのは、実花子と別れる事を決めてからだろう。

そもそも、元ホステスの母親に愛人の息子というレッテルを貼られて、まともな家庭とは言いづらい環境でしか、育ってない俺には、ありふれた、穏やかな家庭を描くことが、想像できなかった。
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