続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
目の前の視界が、滲みそうになった私は、顔を上げて空を見上げた。

涙が、(こぼ)れてしまわないように。涙を落っことしたりしないように。

見上げた空は、青く澄み渡っていて、美しい。 
それなのに、その青空は、やっぱり、涙でじんわりと滲んでいきそうだ。

(泣いちゃダメだ……一人で泣かないって、颯と約束したんだから)

私は、青い空に向けて、スマホを翳すと、パシャリと一枚写真を撮った。すると丁度、スマホが震えて、液晶画面にラインのメッセージが浮かぶ。

『飯、何食べてる?俺は、蕎麦屋で天ぷら蕎麦食って、午後から打ち合わせ』

颯からだった。

実花子は、一緒じゃないんだろうか?天ぷら蕎麦の画像と共に颯からメッセージが届いて、思わず潤んでいた涙は、引っ込んだ。

私は、すぐに颯に返信する。

『麻美ちゃんから、教えた貰ったベーグル屋さんに二人で行って、テイクアウトしてきたよ。ブルーベリーチーズ味のベーグルを食べたの。画像は、食べちゃったからないんだけど、凄く美味しかったよ』

既読がついて、また、颯からラインが入る。

『良かったな。今度の休み、その店に昼、食べに行こう?俺も美弥と食べたい』

思わず、私は、笑みが(こぼ)れていた。颯と、お昼に何を食べたか、教えあうだけなのに、心は、小さな幸せが、しんしんと降り積もっていく。

『うん、一緒に行けるの楽しみにしてるね。
今日は、屋上で、お昼食べたんだけど、空が、すごく綺麗だよ』

私は、さっき撮ったばかりの写メを、添付した。今度は既読がついてから、直ぐに返事は来ず、数分してから返事が届いた。

思わず、その返事に、目が釘付けになる。
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