続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
第3章 王子様の憂鬱
「はい、コーヒー、あと今日の予定よ」

実花子が、手帳を片手に、夜までみっちりと詰まった、今日のスケジュールを読み上げていく。聞いているだけで、頭が痛くなる。

「……どうも」

目の前の承認依頼の書類の束に、印鑑を押しながら、俺は、大きな欠伸を繰り返していた。

「ちょっと……颯、何回目よ」

美弥が、麗夜にちょっかいを出されてから2週間程経った。麗夜は、あれから、美弥を呼び出す事はおろか、すれ違っても知らんふりだ。

嵐の前の静けさとは、こういうコトを言うんじゃないだろうか。

「颯、聞いてる?」

「悪い、3回目?あ、4回目か?」

「5回目!」

美弥と一緒に帰る日が増えれば、当然、寝る前は、そうなる確率だって上がる。昨日は、熱くなった身体が一度で、収まらなくて、美弥をようやく解放したのは、夜中3時だった。

(美弥も寝不足だよな……)

視線を感じて、見上げれば、実花子が、あからさまに嫌悪感をあらわにしながら、俺を睨みつけている。

「そんな、こわい顔すんなよ」

「何して寝不足なのかは、聞かないけどね、今日の夜は、松原工業の松原専務と懇親会だからね!欠伸しないでよ!?」

「分かってるって」

俺は、また出そうになる欠伸を慌てて掌で覆って隠した。
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