甘い夢        sweet dream
それが1年生の5月ごろで彼が脱・童貞をしたのもこのころ。それからその美人で彼の初めての相手の先輩と別れるまでの5か月程、あんなに一緒にいたのに彼の隣にはつねに彼女がいて、私の王子様ではなくなってしまった。まぁ、当たり前といっちゃ当たり前なのだが。だって向こうは彼女だし。対して私はただの幼馴染の冴えない地味な女だし。
そしてもう一つ、冴えない地味な女に少女漫画でありがちな展開が待っていた。

「あんた、薫の幼馴染だからって調子乗ってんじゃないよ!」

そう。彼のファンクラブ(…入学してまだ一ヶ月かそこらしか経ってないのに)の会長なる先輩とその子分数名に連れられてベタな体育館裏に。そこで飛び交う暴言の数々。
別に調子には乗ってないし。お互いの家の行き来なんて小さいころからの習慣みたいなものだし。てか、家までつけられてたの?こわっ。
なんて心の中で思いながら、聞き流していたら、これまたベタな展開で、そんな私の態度にイラッときた会長さんの平手が見事に私の頬にヒットしたのだった。
ここでドラマや漫画だったら、『カッコイイ幼馴染が登場』とか『密かに私に想いを寄せていた幼馴染とはタイプが違うイケメン男子登場』とかになるんだろうけど、残念ながら私はヒロインではなくただのモブなので…そんなことはなく。
現実なんてそんなもんだよね。なんて薄ら笑いで思っていたら、それが会長さんの目にとまり、今度は反対の頬を叩かれた。(…わざわざ反対にしてくれたのは、優しさなのか?)こうして私は、入学して役約1ヶ月で高校の洗礼を両頬に受けたのだった。


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