【コミカライズ連載中】年齢制限付き乙女ゲーの悪役令嬢ですが、堅物騎士様が優秀過ぎてRイベントが一切おきない
10 ストーカーではありません
ソルと分かれ身支度を整えたロベリアは、いつもより早めの朝食を一人で終えると、男子寮の入り口を行ったり来たりしていた。
（どうしよう……）
アランに会いたくて来たものの、ここから先は女子は入れない。今日は休日なので、朝の学園内にはロベリアの他に人影もなく、誰かに呼んできてもらうこともできない。
（こんなところに長時間いたら、好きな男子生徒を待ち伏せしているストーカーっぽい子みたいだわ。もう少し後に出直そうかしら）
そんなことを考えていると、一人の男子学生が寮内から出てきた。黒髪で長身の学生は、これから鍛錬にでも行くのか、木製の剣を右手に持っている。
（あ、ダグラス様！）
驚いたロベリアは、とっさに柱の陰に隠れてしまった。しかし、ダグラスにはバレバレだったようで、「そこに隠れているのは誰だ」と怖い声を出されてしまう。
ロベリアは仕方がないので、おずおずと柱の後ろから姿を現した。
「おはようございます。ダグラス様」
ロベリアの姿を見たダグラスが一瞬ビクッとなった。長い前髪で隠され、どういう表情をしているのかまでは分からないが、歓迎されていないことは分かる。
（え？ もしかして、私、嫌われているの？）
『はっ！？ 昨日お姫様抱っこしてもらったときのセクハラが原因？』と思ったが、今の状況が、早朝に待ち伏せしているストーカーそのものだったことをロベリアは思い出した。
「あっ、あっ、違うんです！ これは、ダグラス様を待ち伏せしていたわけではなく！ あ、でも改めてお礼は言いたかったのでお会いできたのは嬉しいんですけど、その、違うんです！」
ロベリアが必死に説明していると、ダグラスがようやくこちらに顔を向けてくれた。少しだけ彼の口元が緩んだような気がする。
「大丈夫ですよ。そんな誤解はしていませんから」
「そ、そうですか。良かったです」
安堵のため息をつくと、ダグラスが右手に持っている剣を見た。
「ダグラス様は剣の鍛錬に行かれるのですか？」
「はい。私の日課です」
それを聞いたロベリアは『じゃあ、この時間帯にここにくれば毎日ダグラス様に会えるのね』と邪な考えが浮かんだが、『いや、それこそ本当にストーカーだから！？』と慌てて打ち消す。
「ロベリア様のご用件は？ 男子寮の誰かをお探しでしたら、私で良ければ呼んできましょうか？」
（なんてお優しいの！？）
優しいダグラスの背後から神々しい光が差し込んでいるような気がする。
「ありがとうございます！ 実はアランに用事があって」
「アラン……グラディオス公爵家のアラン様ですね。先ほどそこで見かけたので呼んできます。少々お待ちください」
ダグラスは礼儀正しく頭を下げると、来た道を早足で戻っていった。そして、すぐにアランを連れてきてくれた。アランはロベリアに気がつくと驚いた様子だった。
人気者のアランはいつも周りに人がいる。今も誰かと話していたようで、アランは隣にいた男子生徒に「ごめん、ちょっと待っていて」と伝えてからこちらに駆け寄ってきた。ロベリアは、お礼を言いたくてダグラスを探したが、もうどこにもいない。
「ロベリア、どうしたの？」
アランのグレーの瞳が驚きで見開かれている。
「急にごめんね」
「ううん。驚いたけど、僕に会いに来てくれるなんて嬉しいな」
アランが少し首をかしげてニコリと微笑むと、彼の銀色の髪がサラリと流れた。ロベリアは、朝日に輝く美しい美青年に一瞬目を奪われたが、ゲームの残虐シーンを思い出し気を引き締める。
（先生は、午前10：00から午後3：00の間、アランを男子寮に戻らせるなって言っていたわ。なんとかしてアランが寮に戻らないようにしないと）
「ねぇ、アラン……」
と言ったものの、ロベリアは男性を誘ったことがなかった。『じゃあ、前世の華の記憶を使って……』と思ったが、残念ながら華にも使えそうな記憶がない。
「あのね、えっと」
『今日、午後3：00まで私と一緒にいて？』『今日は、寮に戻らないで』
お誘いの言葉を考えてみたがどれもおかしい。黙り込んでしまったロベリアに、アランは優しく微笑みかけた。
「分かったよ、ロベリア」
（何が！？）
アランは、「何か悩みがあって、僕に聞いてほしいんだね？ 僕でよければ話してみて」と心配そうな顔をロベリアに向けた。ロベリアは、都合がいいのでそういうことにした。
「ありがとう、アラン。あのね……」
アランは、自身の唇に人差し指を当てた。そんなアランを見て『何をやっても絵になるなぁ』と場違いなことをロベリアは思った。もちろん、ダグラスが一番好きだが、アランは前世の華が二番目に好きなキャラだったので、気を抜くと見惚れてしまう。
「ロベリア、ここじゃダメだよ。君は目立ちすぎるから」
気が付けば、誰もいなかったはずの男子寮の前に軽く人だかりができてしまっていた。皆、チラチラとこちらを見ている。
「場所を変えよう。ちょっとここで待ってて」
アランは待たせていた男子生徒の元に戻ると、「ごめん、話はまた今度でいいかな？」と伝えた。男子生徒は頷きアランに何かを手渡した。それを受け取ったアランは、またこちらに戻ってくる。
「行こう、ロベリア」
歩き出したアランの後をついていく。
「アラン、ありがとう。でも、他の人と約束していたみたいだけどいいの？」
アランは、「いいよ。ロベリアのほうが大事だから」と優しく微笑んだ。それは世の全ての乙女がときめくこと間違いなしの魅力的な笑顔だった。
アランの表の顔に騙されてしまいそうになる心を『サイコパス。監禁。ホルマリン漬け』という恐怖キーワードで押さえつける。
アランは、男子寮の裏にある部活棟までやってきた。ここは部活をしている生徒たちの部室がある建物だった。アランは、『多目的室』と書かれた教室の扉の前に立つと、ポケットから鍵を取り出した。
「実は今日ここで、商談をする予定だったんだ」
「商談？ それってさっき話していた人と？」
「うん、そう」
扉の鍵を開けるとアランは「中で話そう」と手招きした。
（どうしよう……）
アランに会いたくて来たものの、ここから先は女子は入れない。今日は休日なので、朝の学園内にはロベリアの他に人影もなく、誰かに呼んできてもらうこともできない。
（こんなところに長時間いたら、好きな男子生徒を待ち伏せしているストーカーっぽい子みたいだわ。もう少し後に出直そうかしら）
そんなことを考えていると、一人の男子学生が寮内から出てきた。黒髪で長身の学生は、これから鍛錬にでも行くのか、木製の剣を右手に持っている。
（あ、ダグラス様！）
驚いたロベリアは、とっさに柱の陰に隠れてしまった。しかし、ダグラスにはバレバレだったようで、「そこに隠れているのは誰だ」と怖い声を出されてしまう。
ロベリアは仕方がないので、おずおずと柱の後ろから姿を現した。
「おはようございます。ダグラス様」
ロベリアの姿を見たダグラスが一瞬ビクッとなった。長い前髪で隠され、どういう表情をしているのかまでは分からないが、歓迎されていないことは分かる。
（え？ もしかして、私、嫌われているの？）
『はっ！？ 昨日お姫様抱っこしてもらったときのセクハラが原因？』と思ったが、今の状況が、早朝に待ち伏せしているストーカーそのものだったことをロベリアは思い出した。
「あっ、あっ、違うんです！ これは、ダグラス様を待ち伏せしていたわけではなく！ あ、でも改めてお礼は言いたかったのでお会いできたのは嬉しいんですけど、その、違うんです！」
ロベリアが必死に説明していると、ダグラスがようやくこちらに顔を向けてくれた。少しだけ彼の口元が緩んだような気がする。
「大丈夫ですよ。そんな誤解はしていませんから」
「そ、そうですか。良かったです」
安堵のため息をつくと、ダグラスが右手に持っている剣を見た。
「ダグラス様は剣の鍛錬に行かれるのですか？」
「はい。私の日課です」
それを聞いたロベリアは『じゃあ、この時間帯にここにくれば毎日ダグラス様に会えるのね』と邪な考えが浮かんだが、『いや、それこそ本当にストーカーだから！？』と慌てて打ち消す。
「ロベリア様のご用件は？ 男子寮の誰かをお探しでしたら、私で良ければ呼んできましょうか？」
（なんてお優しいの！？）
優しいダグラスの背後から神々しい光が差し込んでいるような気がする。
「ありがとうございます！ 実はアランに用事があって」
「アラン……グラディオス公爵家のアラン様ですね。先ほどそこで見かけたので呼んできます。少々お待ちください」
ダグラスは礼儀正しく頭を下げると、来た道を早足で戻っていった。そして、すぐにアランを連れてきてくれた。アランはロベリアに気がつくと驚いた様子だった。
人気者のアランはいつも周りに人がいる。今も誰かと話していたようで、アランは隣にいた男子生徒に「ごめん、ちょっと待っていて」と伝えてからこちらに駆け寄ってきた。ロベリアは、お礼を言いたくてダグラスを探したが、もうどこにもいない。
「ロベリア、どうしたの？」
アランのグレーの瞳が驚きで見開かれている。
「急にごめんね」
「ううん。驚いたけど、僕に会いに来てくれるなんて嬉しいな」
アランが少し首をかしげてニコリと微笑むと、彼の銀色の髪がサラリと流れた。ロベリアは、朝日に輝く美しい美青年に一瞬目を奪われたが、ゲームの残虐シーンを思い出し気を引き締める。
（先生は、午前10：00から午後3：00の間、アランを男子寮に戻らせるなって言っていたわ。なんとかしてアランが寮に戻らないようにしないと）
「ねぇ、アラン……」
と言ったものの、ロベリアは男性を誘ったことがなかった。『じゃあ、前世の華の記憶を使って……』と思ったが、残念ながら華にも使えそうな記憶がない。
「あのね、えっと」
『今日、午後3：00まで私と一緒にいて？』『今日は、寮に戻らないで』
お誘いの言葉を考えてみたがどれもおかしい。黙り込んでしまったロベリアに、アランは優しく微笑みかけた。
「分かったよ、ロベリア」
（何が！？）
アランは、「何か悩みがあって、僕に聞いてほしいんだね？ 僕でよければ話してみて」と心配そうな顔をロベリアに向けた。ロベリアは、都合がいいのでそういうことにした。
「ありがとう、アラン。あのね……」
アランは、自身の唇に人差し指を当てた。そんなアランを見て『何をやっても絵になるなぁ』と場違いなことをロベリアは思った。もちろん、ダグラスが一番好きだが、アランは前世の華が二番目に好きなキャラだったので、気を抜くと見惚れてしまう。
「ロベリア、ここじゃダメだよ。君は目立ちすぎるから」
気が付けば、誰もいなかったはずの男子寮の前に軽く人だかりができてしまっていた。皆、チラチラとこちらを見ている。
「場所を変えよう。ちょっとここで待ってて」
アランは待たせていた男子生徒の元に戻ると、「ごめん、話はまた今度でいいかな？」と伝えた。男子生徒は頷きアランに何かを手渡した。それを受け取ったアランは、またこちらに戻ってくる。
「行こう、ロベリア」
歩き出したアランの後をついていく。
「アラン、ありがとう。でも、他の人と約束していたみたいだけどいいの？」
アランは、「いいよ。ロベリアのほうが大事だから」と優しく微笑んだ。それは世の全ての乙女がときめくこと間違いなしの魅力的な笑顔だった。
アランの表の顔に騙されてしまいそうになる心を『サイコパス。監禁。ホルマリン漬け』という恐怖キーワードで押さえつける。
アランは、男子寮の裏にある部活棟までやってきた。ここは部活をしている生徒たちの部室がある建物だった。アランは、『多目的室』と書かれた教室の扉の前に立つと、ポケットから鍵を取り出した。
「実は今日ここで、商談をする予定だったんだ」
「商談？ それってさっき話していた人と？」
「うん、そう」
扉の鍵を開けるとアランは「中で話そう」と手招きした。
