【コミカライズ連載中】年齢制限付き乙女ゲーの悪役令嬢ですが、堅物騎士様が優秀過ぎてRイベントが一切おきない

【ダグラス視点】

 アランを食事に誘ったロベリアに向かって、ダグラスは礼儀正しく一礼し、その場から離れた。

(やはり、いらぬ世話だったようだ)

 ロベリアの態度があまりに自分に好意を寄せているように見えるので、余計なことをしてしまった。

(そんなことが、あるはずないのに)

 昔から大きな身体に鋭い瞳で、女性には怖がられていた。目が合っただけで「怖い」と泣かれてしまったこともある。

 そんなダグラスだったが、ロベリア以外にも、ダグラスに好意的に接する令嬢は今までにもいた。だが、それは全て演技で、彼女たちの本当の狙いはカマル王子だった。

 ダグラスに近づく女性は皆『カマル殿下の腹心を落とせば、カマル殿下に近づける』という野心に溢れていた。

 だからこそ、初めてロベリアに会ったとき「素敵」と言われて、ダグラスは『またか』とあきれた。

 侯爵家の美しい令嬢が、伯爵家の三男であるダグラスに好意を持つわけがない。そう思っていたのに、学園で見かけたロベリアは、まるでカマルを避けるような態度を取っているように見えた。

 『いったい何を企んでいるんだ?』と警戒していたが、カマルに「お前に睨まれて怯えなかった令嬢は、ロベリアが初めてじゃないか?」と言われて、ダグラスは少しだけロベリアに興味を持ってしまった。

 それと同時にカマルに「私は、私の友ダグラスを怖がらない、彼女に興味が湧いたよ」と言われ『やはりすべては、殿下に近づくためのロベリア嬢の策略か』とすぐに考え直した。

 そういう流れでロベリアを警戒していたのに、カマルの命令でロベリアを抱きかかえて保健室まで運ぶことになってしまった。

(カマル殿下は、困ったことに私をからかうのがお好きだからな……)

 女性が苦手なダグラスに女性を運ばせて動揺する姿を見たかったに違いない。

 ダグラスはというと、抱きかかえたロベリアの軽さに驚き、頬を染めたロベリアに抱きつかれ、さらに驚いた。それからなんとなくロベリアを意識してしまい、今にいたる。

 先ほどは、多目的室から嫌がるロベリアの声が聞こえ、とっさに乗り込んでしまったが、今となっては本当に余計なことをしてしまったと反省している。

(こんなことで動揺するなんて、カマル殿下の思うツボだ。我ながら情けない)

 ダグラスは置きっぱなしにしていた木剣を拾うと、再び鍛錬場へと向かった。
< 14 / 66 >

この作品をシェア

pagetop