【コミカライズ連載中】年齢制限付き乙女ゲーの悪役令嬢ですが、堅物騎士様が優秀過ぎてRイベントが一切おきない
23 妹は私が守ります!
掃除道具用のロッカーに閉じ込められた日から、今日でちょうど一週間がたった。
午後の授業を終えたロベリアは、学園内にある庭園のベンチに座ると小さくため息をついた。
(あれからダグラス様に会うこともないし、ソルも部屋に来ないし、本当に平和だわ……)
このまま平和な日々が続けばいいと思うのに、心のどこかでは何も進まないことへの焦りも感じていた。ぼんやりと咲き乱れる花々を眺めていると、視界の隅に黒い人影が小さく写る。
よく見ると離れた場所に、この学園の教師が良く身にまとっている黒いマントを着たソルが立っていた。ソルは自身の腰辺りをポンポンと二回叩くと去っていく。
(何かの暗号かしら?)
ソルの行動をなんとなく真似してロベリアも腰辺りをたたくと、そこには制服のポケットがついていた。まさかと思い、制服のポケットに手を入れると紙切れが入っていた。
『明日、朝5:00に部屋に行きます』
(いつの間に……)
驚きながらも、『いつも勝手に押しかけてくるのに、事前に知らせてくれるなんて珍しいわね』とロベリアは思った。
ふいに「きゃあ」と黄色い悲鳴が上がる。見ると遠くにカマルの姿が見えた。その後ろにはダグラスが付き従っている。
ロベリアはベンチから立ち上がると、二人を避けるように反対側に歩き出した。
カマルを避け遠回りをしてから女子寮に戻ると、その付近でカマルとリリーが話していた。
(え、嘘!? いつの間に二人は仲良くなったの!?)
二人に気がつかれないように静かに通り過ぎると、ロベリアは慌てて寮の自室に戻った。急いで乙女ゲーム『悠久の檻』の情報をまとめた手書きノートを開く。
(リリーとカマルが一緒にいたわ!)
もしかしたら、知らないうちに、二人の恋愛イベントが進んでしまったのかもしれない。
正規ルートでは、二人の王道ピュアストーリーが展開されるが、裏ルートに入ってしまうとリリーがカマルに無理やりひどいことをされてしまう。そして、どちらのルートでも、リリーをいじめたロベリアは殺されはしないものの、皆の前で断罪され社会的地位を失うことになる。
(アランやソルルートよりかはマシだけど、カマルもリリーにとって最高に良い相手とは思えないのよね……)
じゃあ、どういう相手なら良いかロベリアは考えた。
(やっぱり、リリーのことを心から愛しているけど、束縛しない人が良いわね。リリーに苦労させたくないから、ある程度の地位とお金がないと困るわ。レグリオも悪くないけど、もっと逞しくてリリーを守ってくれそうな人……)
ふとダグラスが思い浮かんだが、『いや、それは私の趣味だから』と慌てて首を振る。
扉がノックされたので、ロベリアは素早くノートを机の引き出しに入れた。扉を開けるとリリーが立っていたので笑顔で室内へ招き入れる。
(リリーに、カマル殿下とのことを聞いたほうがいいのかしら……?)
ロベリアが悩んでいると、リリーの左手首が赤くなっていることに気が付いた。
「リリー、これ、どうしたの!?」
リリーはサッと右手で隠すと困ったように視線をそらす。
「もしかして、カマル殿下に……?」
リリーは、翡翠色の瞳にうっすら涙を浮かべた。
「お姉様、私……悔しい」
震えるリリーをロベリアは抱き締めた。
「だ、大丈夫!? 他に痛いところはない?」
うなずくリリーを見て、ホッとしたと同時にカマルに激しい怒りが覚えた。
「リリー、もう絶対にカマルに近づいてはダメよ!」
「……うん」
(あの変態王子……とうとうリリーに手を出したわね。しかも、リリーの手首が赤くなるほど強く握るなんて……許さない)
腕の中で震えるリリーが落ち着けるように、優しく背中をなでてあげる。
「リリー、ごめんなさい。私が貴女とカマルを二人きりにしたから……」
ついさっき、二人を見かけたときに声をかけるべきだった。カマルの側には、いつもダグラスがいるので、無意識にダグラスを避けて自分だけ逃げてしまった。
「リリー。これからは、午後の授業が終わったら、すぐに貴女を迎えに行くわ。教室から一人で出てはダメよ」
「はい、お姉様。お姉様もカマル殿下には近づかないでね?」
「もちろんよ」
安心したのかリリーに可愛らしい笑みが戻った。この笑顔を守るためなら、なんでもできる。
「リリー、私が必ず貴女を守るわ」
リリーの白い頬が薔薇のように赤く染まった。
「お姉様……。私も、私もお姉様を守る!」
リリーの潤んだ瞳はキラキラと輝いている。こんなに内面も外見も愛らしい美少女なら、カマルでなくても誰でも好きになってしまう。だからこそ、リリーが心から愛する人に出会うまでは、誰かが守ってあげなければ。
(はぁ……私の妹、ほんと可愛いわぁ)
ロベリアは、しみじみと思った。
午後の授業を終えたロベリアは、学園内にある庭園のベンチに座ると小さくため息をついた。
(あれからダグラス様に会うこともないし、ソルも部屋に来ないし、本当に平和だわ……)
このまま平和な日々が続けばいいと思うのに、心のどこかでは何も進まないことへの焦りも感じていた。ぼんやりと咲き乱れる花々を眺めていると、視界の隅に黒い人影が小さく写る。
よく見ると離れた場所に、この学園の教師が良く身にまとっている黒いマントを着たソルが立っていた。ソルは自身の腰辺りをポンポンと二回叩くと去っていく。
(何かの暗号かしら?)
ソルの行動をなんとなく真似してロベリアも腰辺りをたたくと、そこには制服のポケットがついていた。まさかと思い、制服のポケットに手を入れると紙切れが入っていた。
『明日、朝5:00に部屋に行きます』
(いつの間に……)
驚きながらも、『いつも勝手に押しかけてくるのに、事前に知らせてくれるなんて珍しいわね』とロベリアは思った。
ふいに「きゃあ」と黄色い悲鳴が上がる。見ると遠くにカマルの姿が見えた。その後ろにはダグラスが付き従っている。
ロベリアはベンチから立ち上がると、二人を避けるように反対側に歩き出した。
カマルを避け遠回りをしてから女子寮に戻ると、その付近でカマルとリリーが話していた。
(え、嘘!? いつの間に二人は仲良くなったの!?)
二人に気がつかれないように静かに通り過ぎると、ロベリアは慌てて寮の自室に戻った。急いで乙女ゲーム『悠久の檻』の情報をまとめた手書きノートを開く。
(リリーとカマルが一緒にいたわ!)
もしかしたら、知らないうちに、二人の恋愛イベントが進んでしまったのかもしれない。
正規ルートでは、二人の王道ピュアストーリーが展開されるが、裏ルートに入ってしまうとリリーがカマルに無理やりひどいことをされてしまう。そして、どちらのルートでも、リリーをいじめたロベリアは殺されはしないものの、皆の前で断罪され社会的地位を失うことになる。
(アランやソルルートよりかはマシだけど、カマルもリリーにとって最高に良い相手とは思えないのよね……)
じゃあ、どういう相手なら良いかロベリアは考えた。
(やっぱり、リリーのことを心から愛しているけど、束縛しない人が良いわね。リリーに苦労させたくないから、ある程度の地位とお金がないと困るわ。レグリオも悪くないけど、もっと逞しくてリリーを守ってくれそうな人……)
ふとダグラスが思い浮かんだが、『いや、それは私の趣味だから』と慌てて首を振る。
扉がノックされたので、ロベリアは素早くノートを机の引き出しに入れた。扉を開けるとリリーが立っていたので笑顔で室内へ招き入れる。
(リリーに、カマル殿下とのことを聞いたほうがいいのかしら……?)
ロベリアが悩んでいると、リリーの左手首が赤くなっていることに気が付いた。
「リリー、これ、どうしたの!?」
リリーはサッと右手で隠すと困ったように視線をそらす。
「もしかして、カマル殿下に……?」
リリーは、翡翠色の瞳にうっすら涙を浮かべた。
「お姉様、私……悔しい」
震えるリリーをロベリアは抱き締めた。
「だ、大丈夫!? 他に痛いところはない?」
うなずくリリーを見て、ホッとしたと同時にカマルに激しい怒りが覚えた。
「リリー、もう絶対にカマルに近づいてはダメよ!」
「……うん」
(あの変態王子……とうとうリリーに手を出したわね。しかも、リリーの手首が赤くなるほど強く握るなんて……許さない)
腕の中で震えるリリーが落ち着けるように、優しく背中をなでてあげる。
「リリー、ごめんなさい。私が貴女とカマルを二人きりにしたから……」
ついさっき、二人を見かけたときに声をかけるべきだった。カマルの側には、いつもダグラスがいるので、無意識にダグラスを避けて自分だけ逃げてしまった。
「リリー。これからは、午後の授業が終わったら、すぐに貴女を迎えに行くわ。教室から一人で出てはダメよ」
「はい、お姉様。お姉様もカマル殿下には近づかないでね?」
「もちろんよ」
安心したのかリリーに可愛らしい笑みが戻った。この笑顔を守るためなら、なんでもできる。
「リリー、私が必ず貴女を守るわ」
リリーの白い頬が薔薇のように赤く染まった。
「お姉様……。私も、私もお姉様を守る!」
リリーの潤んだ瞳はキラキラと輝いている。こんなに内面も外見も愛らしい美少女なら、カマルでなくても誰でも好きになってしまう。だからこそ、リリーが心から愛する人に出会うまでは、誰かが守ってあげなければ。
(はぁ……私の妹、ほんと可愛いわぁ)
ロベリアは、しみじみと思った。