【コミカライズ連載中】年齢制限付き乙女ゲーの悪役令嬢ですが、堅物騎士様が優秀過ぎてRイベントが一切おきない
37 さくっと悩みが解決しました
ダグラスと両想いになれてから二週間が経った。
食堂でロベリアは、向かいの席で優雅に朝食をとるリリーをぼんやりと眺めていた。リリーはロベリアの視線に気がつくと「お姉様、食欲がないの?」と小首をかしげて可愛らしく聞いてくれる。
「そうなの……。リリー、私の悩みを聞いてくれる?」
リリーは『ええー』と言いたそうに眉を下げると「お姉様の悩みなんて、どうせあの護衛騎士とのことでしょう?」と不満そうに頬を膨らませた。
「リリーってば、なんて可愛い表情をっ! じゃなくて、そうなのよ……」
両想いになれたものの、ダグラスに『私たちの婚姻が成立するまで、私は決して貴女に手を出しません!』と宣言されてしまい、言葉の通りダグラスとの進展は一切ない。
「ダグラス様のそういう真面目なところも大好きだけど、私としては、少しくらいイチャイチャしたいわ……」
シクシク嘆くロベリアを、リリーが醒めた瞳で見つめている。
「護衛騎士の言うことが正解よ。お姉様とイチャイチャするのは私だけでいいの!」
リリーが最後の一口を食べ終わると、「なんの話?」とアランが近づいてきた。とたんにリリーの顔が険しくなる。
「アラン……。アンタ、よく私たちに声をかけられたわね!? 厚かましいにも程があるわ!」
アランは「そう邪険にしないでよ」と勝手に同じテーブルについた。
「ようやく僕の謹慎が解けたんだよ」
アランは、処分待ちの謹慎中に部屋を抜け出したため、ダグラスより謹慎期間が長かったようだ。
(ソルの再教育で、アランはどうなったのかしら?)
観察するようにアランを見つめると、アランは「安心してよ」と両肩をすくめた。
「もう君たちに危害は加えないよ」
リリーが「信じられないわ」と怒りをあらわにしている。
「信じてもらえないかもしれないけど、僕はようやく自分が普通だって気がついたんだよ。まぁ、アレと比べると誰でも普通になれそうだけど」
アランは意味ありげにロベリアを見た。
「ねぇ、ロベリア。アレ、なんなの?」
アランが言う『アレ』は、おそらくソルのことを指している。ソルの正体を言うわけにはいかないので、ロベリアが黙っているとアランはため息をついた。
「本人が言っていたけど、アレって『元、太陽の影』なんだって? あんなのが陛下の周りにウジャウジャいると思ったら、謀反を起こす気にはなれないね」
アランが言う『太陽の影』は、国王の護衛暗殺部隊のことだ。
(ソルが自分の正体を明かした目的は、アランにそう思わせることでしょうね)
リリーが「なんの話よ?」と眉をひそめている。
「僕はこの年になってようやく、他人にしたことは、いつか自分に返ってくるってことが分かったって話。人をぞんざいに扱うとぞんざいに扱われるし、法にふれなくても、人の恨みを買うと罰を受けることもある」
リリーが「そんなの当たり前じゃない! 小さな子どもでも知っているわよ」と言うと、アランは「今まで全てが思い通りだったから、僕には分からなかったんだよ」と拗ねるような口調で答えた。
「それにしても、痛くて怖い勉強会だったよ……。何が怖かったって、あれで手加減されていたってこと」
アランは引きつるように口端を上げた。
「僕は、もう人を洗脳するのはやめるよ。アレはもちろんだけど、ロベリアやダグラスだって僕の思い通りにならなかったからね。失敗して痛い目にあうのは嫌だもん」
ロベリアが「賢明な判断ね」と伝えると、アランは「でしょう?」と微笑んだ。その笑みは、どこか少年っぽく、以前のように無駄にキラキラしていない。
「で? ロベリアは何を悩んでいるの?」
リリーが「アンタに言うわけないでしょう?」と言うと、アランは「僕はそれなりに使える男だってことは、二人とも知っているでしょう?」と笑う。
「今度は何を企んでいるのよ?」
「別に企んでいないよ。ただ、これから普通な僕は、普通に学園生活を楽しもうかなって思って」
「胡散臭いわね」
リリーに疑いの眼差しを向けられたアランは「大好きな幼馴染の悩みを解決したいって思うことは普通じゃないの?」と首をかしげている。
(アランが本当に変わってくれたのなら良いけど……)
ロベリアとしてはまだ判断がつかないので、あえて悩みを相談してみることにした。
「実はね、ダグラス様と両想いになれたんだけど、私たちの婚姻が成立するまで決して手を出さないって宣言されちゃったの」
「それで?」
「私としては、少しくらいイチャイチャしたいというか……」
アランは「なーんだ、そんなこと?」とあきれている。
「そんなことって……」
「簡単だよ、ダグラスは手を出さないんでしょう?」
「そうね」
「だったら、ロベリアが手を出したらいいだけだよ。ね、ほら解決した」
リリーの「何をバカなことを言って……」と言う声をさえぎり、ロベリアが椅子から勢いよく立ち上がった。
「アラン、それよ! そうだわ、私からいけばいいのよ!」
「お、お姉様!?」
「だってダグラス様は『手を出さない』って言ったけど、『私から手を出したらダメだ』とは言わなかったもの! すごいわ、アラン! ありがとう!」
ロベリアがお礼を言うと、アランは「純粋な心で人の役に立つって気持ちが良いものだねぇ」と微笑み、リリーは「嫌な予感しかしないわ……」と青ざめた。
食堂でロベリアは、向かいの席で優雅に朝食をとるリリーをぼんやりと眺めていた。リリーはロベリアの視線に気がつくと「お姉様、食欲がないの?」と小首をかしげて可愛らしく聞いてくれる。
「そうなの……。リリー、私の悩みを聞いてくれる?」
リリーは『ええー』と言いたそうに眉を下げると「お姉様の悩みなんて、どうせあの護衛騎士とのことでしょう?」と不満そうに頬を膨らませた。
「リリーってば、なんて可愛い表情をっ! じゃなくて、そうなのよ……」
両想いになれたものの、ダグラスに『私たちの婚姻が成立するまで、私は決して貴女に手を出しません!』と宣言されてしまい、言葉の通りダグラスとの進展は一切ない。
「ダグラス様のそういう真面目なところも大好きだけど、私としては、少しくらいイチャイチャしたいわ……」
シクシク嘆くロベリアを、リリーが醒めた瞳で見つめている。
「護衛騎士の言うことが正解よ。お姉様とイチャイチャするのは私だけでいいの!」
リリーが最後の一口を食べ終わると、「なんの話?」とアランが近づいてきた。とたんにリリーの顔が険しくなる。
「アラン……。アンタ、よく私たちに声をかけられたわね!? 厚かましいにも程があるわ!」
アランは「そう邪険にしないでよ」と勝手に同じテーブルについた。
「ようやく僕の謹慎が解けたんだよ」
アランは、処分待ちの謹慎中に部屋を抜け出したため、ダグラスより謹慎期間が長かったようだ。
(ソルの再教育で、アランはどうなったのかしら?)
観察するようにアランを見つめると、アランは「安心してよ」と両肩をすくめた。
「もう君たちに危害は加えないよ」
リリーが「信じられないわ」と怒りをあらわにしている。
「信じてもらえないかもしれないけど、僕はようやく自分が普通だって気がついたんだよ。まぁ、アレと比べると誰でも普通になれそうだけど」
アランは意味ありげにロベリアを見た。
「ねぇ、ロベリア。アレ、なんなの?」
アランが言う『アレ』は、おそらくソルのことを指している。ソルの正体を言うわけにはいかないので、ロベリアが黙っているとアランはため息をついた。
「本人が言っていたけど、アレって『元、太陽の影』なんだって? あんなのが陛下の周りにウジャウジャいると思ったら、謀反を起こす気にはなれないね」
アランが言う『太陽の影』は、国王の護衛暗殺部隊のことだ。
(ソルが自分の正体を明かした目的は、アランにそう思わせることでしょうね)
リリーが「なんの話よ?」と眉をひそめている。
「僕はこの年になってようやく、他人にしたことは、いつか自分に返ってくるってことが分かったって話。人をぞんざいに扱うとぞんざいに扱われるし、法にふれなくても、人の恨みを買うと罰を受けることもある」
リリーが「そんなの当たり前じゃない! 小さな子どもでも知っているわよ」と言うと、アランは「今まで全てが思い通りだったから、僕には分からなかったんだよ」と拗ねるような口調で答えた。
「それにしても、痛くて怖い勉強会だったよ……。何が怖かったって、あれで手加減されていたってこと」
アランは引きつるように口端を上げた。
「僕は、もう人を洗脳するのはやめるよ。アレはもちろんだけど、ロベリアやダグラスだって僕の思い通りにならなかったからね。失敗して痛い目にあうのは嫌だもん」
ロベリアが「賢明な判断ね」と伝えると、アランは「でしょう?」と微笑んだ。その笑みは、どこか少年っぽく、以前のように無駄にキラキラしていない。
「で? ロベリアは何を悩んでいるの?」
リリーが「アンタに言うわけないでしょう?」と言うと、アランは「僕はそれなりに使える男だってことは、二人とも知っているでしょう?」と笑う。
「今度は何を企んでいるのよ?」
「別に企んでいないよ。ただ、これから普通な僕は、普通に学園生活を楽しもうかなって思って」
「胡散臭いわね」
リリーに疑いの眼差しを向けられたアランは「大好きな幼馴染の悩みを解決したいって思うことは普通じゃないの?」と首をかしげている。
(アランが本当に変わってくれたのなら良いけど……)
ロベリアとしてはまだ判断がつかないので、あえて悩みを相談してみることにした。
「実はね、ダグラス様と両想いになれたんだけど、私たちの婚姻が成立するまで決して手を出さないって宣言されちゃったの」
「それで?」
「私としては、少しくらいイチャイチャしたいというか……」
アランは「なーんだ、そんなこと?」とあきれている。
「そんなことって……」
「簡単だよ、ダグラスは手を出さないんでしょう?」
「そうね」
「だったら、ロベリアが手を出したらいいだけだよ。ね、ほら解決した」
リリーの「何をバカなことを言って……」と言う声をさえぎり、ロベリアが椅子から勢いよく立ち上がった。
「アラン、それよ! そうだわ、私からいけばいいのよ!」
「お、お姉様!?」
「だってダグラス様は『手を出さない』って言ったけど、『私から手を出したらダメだ』とは言わなかったもの! すごいわ、アラン! ありがとう!」
ロベリアがお礼を言うと、アランは「純粋な心で人の役に立つって気持ちが良いものだねぇ」と微笑み、リリーは「嫌な予感しかしないわ……」と青ざめた。