【コミカライズ連載中】年齢制限付き乙女ゲーの悪役令嬢ですが、堅物騎士様が優秀過ぎてRイベントが一切おきない
【コミカライズ記念連載】04 変わっていないようで変わっていく関係
(ダグラス様と一緒に、ダグラス様の生まれ故郷に行けるなんて!)
ロベリアは夢見心地だった。ハッと我に返ったときには、一日の授業がすべて終わって寮の自室に戻ってきていた。
(私、ちゃんと図書館で本を借りてきたのね)
授業内容も覚えているし、ぼんやりしていてもやるべきことはやっていたようで、少しだけ安心する。
夕食までまだ時間があるので、ロベリアは引き出しに閉まっていたノートを取り出した。このノートは前世の記憶を思い出したときに、攻略者の情報を書いたノートだった。
もう乙女ゲームの知識は使えない。でも、ダグラスの領地訪問だけは失敗するわけにはいかない。
(だって初めてダグラス様のお父様にお母様に会うのよ!? 最初が肝心でしょう!)
ロベリアとダグラスの婚約は王家によって取り決められた。だから、よほどのことがない限り二人は結婚することになる。
(結婚後はダグラス様が私の家に婿養子に入るけど、それでもやっぱりダグラス様のご家族と仲良くしたいわ)
ロベリアは、図書館から借りてきた貴族名鑑の本に目を通した。
(ダグラス様はバルト伯爵家の三男。バルト家は騎士家系で、たしか全員騎士なのよね)
名鑑ではダグラスの父が元王宮騎士団長を務めていたことしかわからない。
(三男と言うことは、お兄様が二人いるのね)
前世の知識では攻略対象者ではないダグラスの家族の詳細まではわからない。しかし、今のロベリアの知識で、二人の兄たちが王宮騎士だと聞いたことがある。
(ダグラス様の領地に行ったら、ご両親だけでなくお兄様たちにもご挨拶できるのかしら?)
ダグラスの家族が想像できない。
貴族名鑑によるとバルト領は、王都から北西にある土地で耕作と酪農をバランス良く行っているそうだ。
豊かな土地ではないが貧しくもない。だが、この土地から多くの騎士が輩出されているため王都でも一目置かれている。
ロベリアは本を閉じた。
(本から得られる情報では限界があるわね)
自室の扉がノックされ、リリーの可愛らしい声が聞こえる。
「お姉様、食堂に行きましょう」
あっという間に時間がすぎてもう夕食の時間らしい。ロベリアが扉を開くとリリーが「お姉さま」と抱きついた。
「お姉様、もうすぐ学園が長いお休みに入るでしょう?」
「そうね」
「一緒に侯爵家の別荘に行かない?」
キラキラ笑顔で嬉しそうに誘ってくれるリリー。
「あっ」
ダグラスに誘われてバルト領に行くことを伝えると、リリーの頬はふくらむ。
「せっかく誘ってくれたのにごめんね、リリー」
「レナも長期休暇は大きなイベントに参加するからって、ずっと絵を描いてて遊んでくれないし」
『大きなイベントって、もしかして百合作品の?』と思ったけど、あえて言葉にはしない。
(そのイベント、先生も参加していそう……)
元暗殺者のソルは、未だにロベリアの泣き顔を合法的に見るために、怪しい物語を延々と書き続けている。
それが一部で熱狂的な支持を得ているという情報を、この前会ったときに嬉しそうに教えてくれた。
(本当に何しているのかしら、あの先生は……。でも私、先生に嬉しそうにされると弱いのよね)
元暗殺者だったことを知っているせいか、ソルに嬉しそうにされると『まぁいいか』と思ってしまう。
ロベリアに抱き着いたままのリリーからため息が聞こえてきた。
「お姉様、私のことは気にしなくていいわよ。カマルと一緒に過ごすから」
その顔は決してすねているわけではない。
「本当はね、カマルに長期休暇の間、城で一緒に過ごさないかって誘われていたの。返事を待ってもらっていたけど行くわって伝えるわ」
カマルの婚約者になったリリーは将来王妃になる。正式な王妃教育が始まるのは学園を卒業してからだとロベリアは聞いていた。
でもカマルの意見では、『今からでも城での生活やルールに慣れておいたほうが良い』とのこと。
リリーはロベリアから離れるとニコッと笑う。
「大丈夫よ心配しないで。私、立派な王妃になるからね!」
「リリーなら大丈夫よ」
「うん!」
可愛らしい妹のリリーが急に大人っぽく見えて、ロベリアはドキッとした。
「リリー。私達、変わっていないようで変わっていってるのね」
ロベリアはリリーが大好きで、リリーもロベリアが大好きなことに変わりはない。しかし、お互いに婚約者ができたことで二人の世界は確実に広がっていっている。
もう、そばにいてリリーを抱きしめるだけが愛じゃない。
「私は王妃になったあなたをダグラス様と共にずっと支えるわ」
「頼りにしてるわ、お姉様」
ロベリアはリリーの手を優しく握った。
「でも、今は学生生活を楽しみましょうね!」
「もちろん!」
二人で学生として過ごす時間の大切さに、ロベリアは改めて気がついた。
*
次の日。
昼休みを利用して、ロベリアはダグラスの教室に向かった。
(長期休暇までに一度でいいから時間をもらえないか、ダグラス様の都合を聞いてみよっと)
その途中でバッタリとダグラスと出会う。
「ロベリア、どこに?」
「ダグラス様、じゃなくてダグラスに会いに行こうかと」
「なら、ちょうど良かった」
「何かあったの?」
カマル王子の護衛が第一のダグラスが、カマルの側を離れるなんてよっぽどのことがあったに違いない。
「あ、その、用事は……」
「用事は?」
不安になりながらダグラスの言葉を待っていると、ダグラスの顔はじょじょに赤くなっていく。
「用事は特にないんだ。ただ、ロベリアに会いたくて」
予想外の言葉にロベリアの頬も赤く染まった。
「実は、私からカマル殿下の護衛日数を減らしてほしいとお願いしたんだ」
「えっ!? 大丈夫なの?」
「ああ、殿下は婚約者ができてから、以前のように女生徒に囲まれてることがなくなった。だから、護衛は私でなくともいいと言ってくださった」
「そ、そうなの? でも、急にどうして?」
赤い顔のダグラスは、まっすぐロベリアを見つめている。
「それはもちろん、ロベリアと一緒にこれから学生らしい思い出を作るためだ」
「え?」
驚くロベリアに、ダグラスも驚く。
「昨日、約束しただろう?」
「そうだけど……」
まさかこんなにすぐに叶えてくれるなんて思っていなかった。
「ロベリア、どこに行きたい?」
優しい笑みを浮かべて、そんなことを聞いてくる。
ロベリアは、ダグラスの誠実さに胸が熱くなった。
ロベリアは夢見心地だった。ハッと我に返ったときには、一日の授業がすべて終わって寮の自室に戻ってきていた。
(私、ちゃんと図書館で本を借りてきたのね)
授業内容も覚えているし、ぼんやりしていてもやるべきことはやっていたようで、少しだけ安心する。
夕食までまだ時間があるので、ロベリアは引き出しに閉まっていたノートを取り出した。このノートは前世の記憶を思い出したときに、攻略者の情報を書いたノートだった。
もう乙女ゲームの知識は使えない。でも、ダグラスの領地訪問だけは失敗するわけにはいかない。
(だって初めてダグラス様のお父様にお母様に会うのよ!? 最初が肝心でしょう!)
ロベリアとダグラスの婚約は王家によって取り決められた。だから、よほどのことがない限り二人は結婚することになる。
(結婚後はダグラス様が私の家に婿養子に入るけど、それでもやっぱりダグラス様のご家族と仲良くしたいわ)
ロベリアは、図書館から借りてきた貴族名鑑の本に目を通した。
(ダグラス様はバルト伯爵家の三男。バルト家は騎士家系で、たしか全員騎士なのよね)
名鑑ではダグラスの父が元王宮騎士団長を務めていたことしかわからない。
(三男と言うことは、お兄様が二人いるのね)
前世の知識では攻略対象者ではないダグラスの家族の詳細まではわからない。しかし、今のロベリアの知識で、二人の兄たちが王宮騎士だと聞いたことがある。
(ダグラス様の領地に行ったら、ご両親だけでなくお兄様たちにもご挨拶できるのかしら?)
ダグラスの家族が想像できない。
貴族名鑑によるとバルト領は、王都から北西にある土地で耕作と酪農をバランス良く行っているそうだ。
豊かな土地ではないが貧しくもない。だが、この土地から多くの騎士が輩出されているため王都でも一目置かれている。
ロベリアは本を閉じた。
(本から得られる情報では限界があるわね)
自室の扉がノックされ、リリーの可愛らしい声が聞こえる。
「お姉様、食堂に行きましょう」
あっという間に時間がすぎてもう夕食の時間らしい。ロベリアが扉を開くとリリーが「お姉さま」と抱きついた。
「お姉様、もうすぐ学園が長いお休みに入るでしょう?」
「そうね」
「一緒に侯爵家の別荘に行かない?」
キラキラ笑顔で嬉しそうに誘ってくれるリリー。
「あっ」
ダグラスに誘われてバルト領に行くことを伝えると、リリーの頬はふくらむ。
「せっかく誘ってくれたのにごめんね、リリー」
「レナも長期休暇は大きなイベントに参加するからって、ずっと絵を描いてて遊んでくれないし」
『大きなイベントって、もしかして百合作品の?』と思ったけど、あえて言葉にはしない。
(そのイベント、先生も参加していそう……)
元暗殺者のソルは、未だにロベリアの泣き顔を合法的に見るために、怪しい物語を延々と書き続けている。
それが一部で熱狂的な支持を得ているという情報を、この前会ったときに嬉しそうに教えてくれた。
(本当に何しているのかしら、あの先生は……。でも私、先生に嬉しそうにされると弱いのよね)
元暗殺者だったことを知っているせいか、ソルに嬉しそうにされると『まぁいいか』と思ってしまう。
ロベリアに抱き着いたままのリリーからため息が聞こえてきた。
「お姉様、私のことは気にしなくていいわよ。カマルと一緒に過ごすから」
その顔は決してすねているわけではない。
「本当はね、カマルに長期休暇の間、城で一緒に過ごさないかって誘われていたの。返事を待ってもらっていたけど行くわって伝えるわ」
カマルの婚約者になったリリーは将来王妃になる。正式な王妃教育が始まるのは学園を卒業してからだとロベリアは聞いていた。
でもカマルの意見では、『今からでも城での生活やルールに慣れておいたほうが良い』とのこと。
リリーはロベリアから離れるとニコッと笑う。
「大丈夫よ心配しないで。私、立派な王妃になるからね!」
「リリーなら大丈夫よ」
「うん!」
可愛らしい妹のリリーが急に大人っぽく見えて、ロベリアはドキッとした。
「リリー。私達、変わっていないようで変わっていってるのね」
ロベリアはリリーが大好きで、リリーもロベリアが大好きなことに変わりはない。しかし、お互いに婚約者ができたことで二人の世界は確実に広がっていっている。
もう、そばにいてリリーを抱きしめるだけが愛じゃない。
「私は王妃になったあなたをダグラス様と共にずっと支えるわ」
「頼りにしてるわ、お姉様」
ロベリアはリリーの手を優しく握った。
「でも、今は学生生活を楽しみましょうね!」
「もちろん!」
二人で学生として過ごす時間の大切さに、ロベリアは改めて気がついた。
*
次の日。
昼休みを利用して、ロベリアはダグラスの教室に向かった。
(長期休暇までに一度でいいから時間をもらえないか、ダグラス様の都合を聞いてみよっと)
その途中でバッタリとダグラスと出会う。
「ロベリア、どこに?」
「ダグラス様、じゃなくてダグラスに会いに行こうかと」
「なら、ちょうど良かった」
「何かあったの?」
カマル王子の護衛が第一のダグラスが、カマルの側を離れるなんてよっぽどのことがあったに違いない。
「あ、その、用事は……」
「用事は?」
不安になりながらダグラスの言葉を待っていると、ダグラスの顔はじょじょに赤くなっていく。
「用事は特にないんだ。ただ、ロベリアに会いたくて」
予想外の言葉にロベリアの頬も赤く染まった。
「実は、私からカマル殿下の護衛日数を減らしてほしいとお願いしたんだ」
「えっ!? 大丈夫なの?」
「ああ、殿下は婚約者ができてから、以前のように女生徒に囲まれてることがなくなった。だから、護衛は私でなくともいいと言ってくださった」
「そ、そうなの? でも、急にどうして?」
赤い顔のダグラスは、まっすぐロベリアを見つめている。
「それはもちろん、ロベリアと一緒にこれから学生らしい思い出を作るためだ」
「え?」
驚くロベリアに、ダグラスも驚く。
「昨日、約束しただろう?」
「そうだけど……」
まさかこんなにすぐに叶えてくれるなんて思っていなかった。
「ロベリア、どこに行きたい?」
優しい笑みを浮かべて、そんなことを聞いてくる。
ロベリアは、ダグラスの誠実さに胸が熱くなった。