【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
「………お父様は残念だと嘆くでしょうね。レンティル様なら、わたくしを幸せにしてくれると思って数々の男性の中からレンティル様を選んだというのに」
「リ、リディア…!挽回のチャンスを……お願いだッ」
マベール侯爵は歴史ある古参の貴族です。
それゆえに新参者であるペルーシャ子爵家と関係を持つことを裏では余り良く思っていませんでした。
けれども、この結婚は互いの利害関係が複雑に絡み合った重要な契約なのです。
「残念ながら、チャンスはありませんわ」
「な、何故だ……!」
「それは、わたくしがレンティル様の事を全く、これっぽっちも好きではないからです」
満面の笑みを浮かべているわたくしを見て、レンティル様は呆然としています。
この反応を見る限り、自分がわたくしに愛されているとでも思っていたのでしょうか。