【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
⑤ 元婚約者がよりを戻そうと押しかけて来ましたが……わたくし、もう結婚してますけど
「ーーーカサンドラ、お前とよりを戻してやろう」
いきなり連絡もなしに屋敷にやって来たのは元婚約者……ビズレッド伯爵家の嫡男であるエイヴリーである。
その後ろからは困惑した表情を浮かべる侍女や執事達の姿があった。
心配そうに此方を見ている。
興奮しているのか、エイヴリーは目を見開きながら此方を見ていた。
「は……?」
開口一番……あまりに馬鹿馬鹿しい発言に、この言葉しか出てこなかった。
そして何を思ったのかは知らないが、思いもよらない言葉がエイヴリーの口から飛び出した。
「寂しかっただろう?俺がお前を振ったせいで俺を忘れられなかったことだろう………悲しい想いをさせて悪かった」
「……」
「しかし、今日からはまた俺が側にいてやるから安心しろ?父上と母上にはもう話してあるんだ!なんて優しい息子なのだと褒められたよ」
「……」
「さぁ、早く手続きをしようじゃないか!もう泣く必要はない……愛しい婚約者が戻ってきたのだから」