【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
*
カサンドラ・メレゼ
メレゼ子爵の次女であるカサンドラは、ある日……夜会で出会った一人の令息と運命的な恋をした。
それがエイヴリー・ビズレッドだった。
燃え上がるような恋をしたエイヴリーとカサンドラは勢いのままに婚約した。
エイヴリーとカサンドラの愛は、誰にも止められないほどに熱かった。
「カサンドラ……お前と出会えて本当に嬉しい」
「わたくしも嬉しいです!エイヴリー様…」
「一目見た時から運命の相手は、カサンドラしかいないと気付いてしまったんだ!」
「エイヴリー様」
「愛してるよ」
二人の関係は順調だった……少なくともカサンドラはそう思っていた。
けれど時間と共に、徐々にエイヴリーのカサンドラに対する興味と愛情が薄れていくのを感じていた。
それでもカサンドラはエイヴリーを信じていた。
しかし、カサンドラがエイヴリーをお茶や買い物に誘っても、断られる事が増えていった。
次第にエイヴリーと会う時間は減っていった。
そしてカサンドラが出した手紙の返事が来るのも、間が空いていくようになった。
酷い時は返ってこない事もあった。
「最近、忙しいんだ」
そう言われてしまえば、カサンドラは何も言えなくなった。
(不安だわ……)