【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
デクランはこの地味な見た目とオドオドした喋り方がとても可愛い、最強で最高な推しなのである。
そして眼鏡を取った時の顔が世界で一番イケメンだ。

大切な事なのでもう一度言おうと思う。
世界で一番のイケメンだ。

異論は認めない。

そして記憶が戻った瞬間に瞬時に理解した。

(…………私は今、推しを守る為にこの世界にやってきたに違いない)

あわあわとしながら首を横に振るデクランは可愛いので、もう少し見ていたい気持ちもあるが、彼が悲しんでいるというのなら黙っている訳にはいかない。

スッ……と立ち上がり静かにデクランの元へと向かう。
足を進める度に周囲は静まり返る。
バサリと黒と紫の羽の扇を広げて一歩一歩と足を進めていく。


「何の騒ぎですの……?」

「……ッ」

「リリアーナ殿下っ……これは」

「なんだ、リリアーナ!お前は関係ないだろう!?」

「殿下!!リリアーナ殿下にそのような事を言っては……!」

「いいんだよ!コイツは俺が何をしても口を出さないからな」


この国は今、長い旱魃により食糧難と財政難に陥っていた。
助けを求めようとも周囲の国々もギリギリの状態だった。

そこで大国のベルベット皇国に助けを求めた。
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