【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
そしてあっさりとリリアーナの願いは叶えられた。

リリアーナはナシールの婚約者となった。

別にその座を望んでは居なかったが、大国であるベルベット皇国の皇女故に致し方がない事だった。
そしてレブーロン城では、まるで腫れ物に触るように扱われていた。

(どこに行っても同じね……でも)

自分の目的が果たせるのなら何でもよかった。
そしてナシールと同じ王立学園に通う事になった。

馬車でナシールと何を話す訳でもなかったが、愛する人……チェリーについての話はよく聞いていた。

リリアーナはナシールから宣言された通り愛される事はなかった。
チェリーとナシール達のやり取りを見ている彼女を見て周囲は肝を冷やしていた。

ベルベット皇帝がリリアーナを特別溺愛しているのは有名な話だ。
学園でも特例として騎士二人と侍女二人が許可される超VIP待遇。

ベルベット皇帝はこの婚約について、ある条件を出していた。
それを守りさえすれば、国を建て直すまで食糧を調達してくれるという破格の条件だ。

その中にはリリアーナを絶対に傷付けてはならない。
リリアーナが婚約を破棄したいと言ったら国に返す……等の親バカ全開の願いも含まれている。

その際は支援も打ち止めである。

つまりレブーロン王国はリリアーナの機嫌一つ次第でどうにでもなってしまうのだ。
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