【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
喜びに踊りたくなるのを我慢しておりました。
今すぐ兎のようにぴょんぴょんと飛び跳ねたい気分です。
それと満面の笑みを浮かべるのを必死に堪えている為か唇が痙攣しています。

そんな気持ちが溢れ出してしまったのかコーディ殿下から注意が入ります。


「何を笑っているんだ。無礼だぞ……!」

「あら……申し訳ございません。ついですわ、つい」

「チッ……」


我慢出来ない喜びが大爆発してしまったようで、恥ずかしくなり赤くなった頬を押さえます。

コーディ殿下こそ「今、舌打ちが聞こえたのですが?」と注意したくなりましたが、もう性格の歪んだ王子様のお世話をしなくてもいいのです。
全てアンバー様に任せることに致しましょう。


「何を喜んでいる……!?まるで俺と婚約を解消できる事を喜んでいるような口振りだが気の所為か!?」

「…………」

「……おい」

「気の所為では?」

「無礼な奴め!!お前は昔から……っ」


もし喜んでいると知られたら面倒な事になりそうです。

それに、これくらいでたじろいでいるようでは社交界で生き残れません。

この事態をどれだけ華麗に躱す事が出来るのか。
わたくしを黙らせる事が出来るのか……コーディ殿下とアンバー様のお手並み拝見と致しましょう。


「……無礼なのは殿下達の方ではありませんか?」
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