潮風、駆ける、サボタージュ
第5話 体操着と制服
今日の体育はハードル走だった。
当然由夏にとって体育は得意科目で、中でも走りに関する陸上競技は水を得た魚のように活き活きとする時間だ—本来なら。
体操着に着替えはしたが、どうにも気分が乗らない。“走る”と考えただけで足が竦んでしまった。
お腹が痛いことにして、見学させてもらうことにした。
午後2時
今日にも梅雨明けかと言われている夏の入り口にしては穏やかな陽射しで、クラスメイトの声を遠くに聞いていると寝不足のせいもあって微睡んでしまいそうになる。
「藤澤も見学?」
ふぁ…とあくびを噛み殺した瞬間、突然近くから話しかけられて由夏の肩が小さく揺れた。
右を見上げると高橋が立っていた。
昼過ぎの屋外にいるせいか蜂蜜色の金髪がいつもより眩しい。
“も”ということは圭吾も見学ということだろうか、と社交辞令程度に聞こうかと思ったが、その必要は無かった。
「着替えてないんだ。」
圭吾は開襟シャツに黒いズボンの制服姿だった。
「なんで見学なのに着替えるんだよ。時間のムダじゃん。」
たしかに由夏も事前に見学を決めていれば体操着になっていなかっただろうとは思うが、圭吾に言われると必要以上にムッとしてしまう。
当然由夏にとって体育は得意科目で、中でも走りに関する陸上競技は水を得た魚のように活き活きとする時間だ—本来なら。
体操着に着替えはしたが、どうにも気分が乗らない。“走る”と考えただけで足が竦んでしまった。
お腹が痛いことにして、見学させてもらうことにした。
午後2時
今日にも梅雨明けかと言われている夏の入り口にしては穏やかな陽射しで、クラスメイトの声を遠くに聞いていると寝不足のせいもあって微睡んでしまいそうになる。
「藤澤も見学?」
ふぁ…とあくびを噛み殺した瞬間、突然近くから話しかけられて由夏の肩が小さく揺れた。
右を見上げると高橋が立っていた。
昼過ぎの屋外にいるせいか蜂蜜色の金髪がいつもより眩しい。
“も”ということは圭吾も見学ということだろうか、と社交辞令程度に聞こうかと思ったが、その必要は無かった。
「着替えてないんだ。」
圭吾は開襟シャツに黒いズボンの制服姿だった。
「なんで見学なのに着替えるんだよ。時間のムダじゃん。」
たしかに由夏も事前に見学を決めていれば体操着になっていなかっただろうとは思うが、圭吾に言われると必要以上にムッとしてしまう。