潮風、駆ける、サボタージュ
体育座りで膝を抱えた由夏と立ったままの圭吾は、それぞれ遠くのクラスメイト達を見ていた。
圭吾の言葉に一瞬固まった由夏だったが、どん底の自分がまた揶揄(からか)われたんだとハッとした。
けれど、高橋が真面目な努力家だと知ってしまい、どうにも言葉が見つからなかった。
「また、うそ」
それだけポツりと言った。

遠くのクラスメイトの声だけが聞こえる時間がしばらく続いた。

視線は前に向けたまま、沈黙を破ったのは由夏だった。
「…高橋、毎日図書室で勉強してるんだってね。」
一瞬間を開けて圭吾が答えた。
「ああうん。何、誰かに聞いた?」
「吉田に聞いた。」
「ふーん。」
あまり興味無さそうに圭吾が言った。
「…ごめんね」
由夏がまたポツりと声に出すと、今度は圭吾が理解できないというような顔で由夏を見た。
「なにが?」
「………」
ふいに出た謝罪に自分でも戸惑ったのか、気持ちを整理するように由夏は一呼吸置いてから話し始めた。
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