潮風、駆ける、サボタージュ
第7話 太陽
走って、少し止まって、また走って
海風や砂から建物を保護《まも》るためか、この海辺の街は入り組んだつくりをしている。
何度も何度も角を曲がってどんどん進んでいく。
森先がどんなに早く学校を出ても、行き先を知らない限りはすぐに追いつけないだろう。
角を3回ほど曲がった時点で、由夏には圭吾がどこへ向かっているのか想像がついていた。
胸が高鳴った。
授業を抜け出すなんて、とくに受験生にはあるまじき行為だ。
教師に怒られるだろうというスリルと少しの背徳感、そして、それを共有する圭吾の存在。
あんなに苦しかった“走る”という行為が今この瞬間はとても楽しい。
風に混ざる潮のにおいが少し濃くなった気がする。
アスファルトの上に被る砂もだんだんと増えてきた。
「高橋、結構走るの速いね。」
「そう?」
圭吾は少し笑ったように答えた。
目立っていたから目に入っていたはずのクラスメイトのことを何も知らないんだ、と由夏は不思議な気持ちになった。
目の前、目線より少し上にある金色の髪が陽光に透けてキラキラ光っている。
あんなに苦手だった金色。
(太陽みたい)
今は眩しい光のラインのように見える。
海風や砂から建物を保護《まも》るためか、この海辺の街は入り組んだつくりをしている。
何度も何度も角を曲がってどんどん進んでいく。
森先がどんなに早く学校を出ても、行き先を知らない限りはすぐに追いつけないだろう。
角を3回ほど曲がった時点で、由夏には圭吾がどこへ向かっているのか想像がついていた。
胸が高鳴った。
授業を抜け出すなんて、とくに受験生にはあるまじき行為だ。
教師に怒られるだろうというスリルと少しの背徳感、そして、それを共有する圭吾の存在。
あんなに苦しかった“走る”という行為が今この瞬間はとても楽しい。
風に混ざる潮のにおいが少し濃くなった気がする。
アスファルトの上に被る砂もだんだんと増えてきた。
「高橋、結構走るの速いね。」
「そう?」
圭吾は少し笑ったように答えた。
目立っていたから目に入っていたはずのクラスメイトのことを何も知らないんだ、と由夏は不思議な気持ちになった。
目の前、目線より少し上にある金色の髪が陽光に透けてキラキラ光っている。
あんなに苦手だった金色。
(太陽みたい)
今は眩しい光のラインのように見える。