潮風、駆ける、サボタージュ
第1話 金色
(脚にビニール袋がへばりついたような、静電気を帯びてカサカサと鳴っているような感覚…
ううん、踝くらいの深さの川を流れと逆行して走っているような感覚かもしれない。
とにかく不快で重くて逃げられない、見えない何かが脚に触れている感覚。)
(音も景色も消えたんだから脚だけじゃなくてきっと顔も覆われてる…ああ、でも砂埃の匂いはするし、色もなんとなく感じてるから、目と口に穴をあけ忘れたお面って感じなのかもしれない。)
たった100m走る中で、由夏は自分を包む空気の不快感をどう形容したものか考えていた。
誰に伝えるわけでもない不快感を。
そのたった100mの途中で、今日は黄色いような茶色いような何かが視界の端に映り込んだ気がした。
長い長い100mを走り終えたところで、顧問にタイムを聞き、ため息を吐きながら由夏は“何か”があったところに目をやった。
そこはグラウンドと生徒が校門に向かう通路を隔てるフェンスだった。
短距離走で使っているのはグラウンドの端の直線ライン。それほど陸上競技に力を入れている学校というわけでもないため、立派なトラックは用意されていない。
何もない。
気のせいか、と由夏がタオルに手をかけた瞬間
「おつかれ」
誰かが由夏に声をかけた。
ううん、踝くらいの深さの川を流れと逆行して走っているような感覚かもしれない。
とにかく不快で重くて逃げられない、見えない何かが脚に触れている感覚。)
(音も景色も消えたんだから脚だけじゃなくてきっと顔も覆われてる…ああ、でも砂埃の匂いはするし、色もなんとなく感じてるから、目と口に穴をあけ忘れたお面って感じなのかもしれない。)
たった100m走る中で、由夏は自分を包む空気の不快感をどう形容したものか考えていた。
誰に伝えるわけでもない不快感を。
そのたった100mの途中で、今日は黄色いような茶色いような何かが視界の端に映り込んだ気がした。
長い長い100mを走り終えたところで、顧問にタイムを聞き、ため息を吐きながら由夏は“何か”があったところに目をやった。
そこはグラウンドと生徒が校門に向かう通路を隔てるフェンスだった。
短距離走で使っているのはグラウンドの端の直線ライン。それほど陸上競技に力を入れている学校というわけでもないため、立派なトラックは用意されていない。
何もない。
気のせいか、と由夏がタオルに手をかけた瞬間
「おつかれ」
誰かが由夏に声をかけた。