コーヒー☕
珈琲☕
目の前に,たっぷりの珈琲があって。
今この一瞬にすら飲んで減っていく珈琲があって。
私は,その味に何の不満も抱いてなくて。
だけどある日。
ほんの少しの興味から,お砂糖を少しだけ入れてみた。
そしたらちょっと気分が上がるような,甘い味になって。
悪くない。
つい微笑むような,新鮮さ。
気付けば私が入れる砂糖の量は毎日増えていって。
その内,砂糖を入れられなくなって。
じゃりじゃりと嫌な食感をももたらす甘味に,吐き気すら覚えて。
この味じゃない。
飽きてしまった。
生まれて初めて,その珈琲の味に嫌悪感を抱いた。
胃もたれするようなその甘さ。
その味をどうにか薄めたくて,とても頑張ったけど。
甘い甘いお砂糖は,それすらも嘲笑うように口内をざらつかせ,胃の中にどっぷりと溜まっていった。
甘いのが,ツラい。
これ以上,入れるのが,キツい。
これ以上,入れられるのも,キツい。
ごめんね,なんて。
誰かに向けて思いながらぎゅっと目を閉じて,その珈琲をまた飲み続けたけれど。
いつしか温かかった珈琲は極限まで冷めきって,私は。
ー初めて出来た,愛情深い彼氏を捨てた。
そうすればみるみる内に,毎日珈琲の味は変わっていって。
最初に珈琲は温度を取り戻していき,カップを両手で挟もうと思えば,服の袖が必要だった。
よくよく観察してみれば,色も綺麗になった様に思う。
ざらつきも甘味も無くなって,1年も経てば元の味と全く一緒。
私は熱々のカップに,控えめに口をつけて,珈琲をゴクリと飲み込んだ。
それはコクンとゆっくり落ちていき,とくりと心臓をならす。
ほっとする,大好きな味。
混じりけのない,シンプルな味。
それは
ーつい微笑むような,安心感。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。

総文字数/24,038

青春・友情47ページ

表紙を見る
可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。

総文字数/32,492

恋愛(学園)68ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop