落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 小屋の外から叫ぶ。そうするといつも妹は駆け出してくるのだ……が?
 なぜか今日は、出て来ない。どうしたのだ? まさか、中で倒れているのでは? 急いで馬を降り、小屋に入ると、人の気配がなかった。中は凍えるように寒い。つまり、竈が使われていない、ということだ。 
 どこかに出掛けたのか? しかし、パトリシアに出掛ける用事はないはずだ。彼女はライガンの小屋に来てから、ただの一度も出掛けたことはなく、そうする理由もなかったのだ。
 パトリシアは治療魔術に向いていない、とライガンに言われた。どうやら、体内の魔力量が少なく、無意識に自分の生命力を使ってしまうらしいのだ。彼女が悲しむので、本当のことは言っていない。 
 だが、絶対に治療魔術を使わせないようにしなければと考えていた。私がライガンの魔術の全てを継承し、パトリシアに負担をかけないようにする。その一心で今まで生きてきたのだ。
 そんな回想をしつつ、私は小屋の中を忙しなく徘徊した。どこかに、手がかりを残してないか? もし出掛けるのなら一筆書いておくのが……あ。
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