落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 食卓のテーブルの上に、紙を見付けた。それには、パトリシアの筆跡で、バーディアから私宛に依頼があったこと、そして、なにか出来ることがあるかもしれないから自分は先に行く、と書かれていた。
 そうか。きっとパトリシアは、故郷を助けたいと思い、なりふり構わず駆け出したのだろう。
 しかし、これは……まずい。早くバーディアに行きパトリシアを止めなければ、彼女の生命力が危うい。妹は昔から、人を助けるためなら自分のことなどどうでもよいと思っている。いや、本人にはその自覚がないのだから、もっとたちが悪いのだが……。
 すぐさま小屋を出て、疲れているだろう愛馬に跨る。すまないな、もう少し無理を聞いてくれ。私の大事な妹のために。そう念じると、ストレインは了解したように一度嘶き、雷の如く疾走した。
 
 数年ぶりのバーディアは独特の異様さに溢れていた。往来を兵士が埋め尽くし、ふと見た食堂では酔った兵士が暴れ、ひと騒動起きている。家族で行ったことのある食堂だった縁もあり、その騒動を収めると、女主人に礼を言われた。
「どなたかは存じませんが、お助け下さりありがとうございます!」
< 178 / 264 >

この作品をシェア

pagetop