落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「いや。それにしても町が物騒だな。戦争のせいか?」
 尋ねると、女主人はため息を吐いて肩を落とした。
「ええ。ドーランとの戦争が膠着状態になり、イライラした兵士たちが、町で悪さをするようになったのです」
「まあ、戦にはありがちだな。しかし、国王はこの治安の悪さを正そうとしないのか?」
「国王陛下は……もう民には興味がないのでしょう」
「は?」
 女主人の言った意味がわからず、私は言葉を失った。興味がない、とはどういうことだ?
「陛下には戦争が第一。軍備増強のために近隣から兵を募り、足りないと知れば強制的に民から徴兵しました。そして、ドーランが神懸った防御魔法を手に入れたと知ると、更に徴兵し……先日、私の夫も王宮に連れていかれました」
「民を戦に駆り出すだと……信じられない」
「はい。前は民思いの優しい国王陛下だったのですが」
 女主人は近くの椅子に座り込むと項垂れた。
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