落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「ドーランへ行く! そして妹を取り返す!」
「幻獣や獣人に邪魔されたら、どうします?」
「全て倒す」
 グラウニクにそう告げると、私は国王に頭を下げて場を辞した。
 時間はない。一刻も早く、ドーランへ行きパトリシアを奪還しなくては。


 閑話(奸計)

「生きていると思っているのか? グラウニク」
 聖騎士ダルシアの去った玉座の間で、私は神官長に尋ねた。
「ふふふ。望みは薄いですが、可能性がないとは言い切れません。死んだと納得させるのが難しいようなので、ささやかな希望を抱かせてみました。そのほうが、やる気も出るでしょう?」
「残酷な奴だな」
「ははは、誉め言葉として受け取っておきます。ですが……ひとつ気になることが……」
 グラウニクは少し難しい顔をしながら、私の側に屈み小声で言った。
「ドーランの獣人たちが急に強靭になった件。どうも、変な気がしませんか? ちょうどパトリシアを森に放逐した時期とかぶるのです」
「そういえば……そうだな」
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