落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 そこでアレンに聞いたのは、驚くべき開戦理由だった。伝説の宝(森羅万象)を手に入れるために、邪魔なドーランの獣人と幻獣を皆殺しにしたのち、業火の山でゆっくり宝を探す。業火の山の熱さの中では竜以外は数分しか持たないので、いくらでも代わりがきくように、バーディア国民から徴兵しておくようにした、と。グラウニクは宝を手に入れるために、数多の命を犠牲にしてもいいと考えているのだ。
 ドーランを知り尽くしている上での狡猾さに、聞いていて気分が悪くなった。どうしてそこまで悪いことを考えられるのだろう。なぜ同じ種族の獣人に酷いことが出来るのだろう。人の命をなんだと思っているのだろう。いくら考えても私にはさっぱりわからなかった。
「バーディアの開戦理由、グラウニクの目的、それらは概ねわかりました。しかし、奴らの望むものは、すでにパトリシアの中にある。これを向こうに伝えれば戦う理由はなくなるはずですが、そう簡単に引くでしょうか」
 ティアリエスは早口で言い、続けた。
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