落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「なにせ相手はあのグラウニク・ゴート。書庫で伝説の宝の存在を知り、愚かにも手に入れようと企み、自分は手を汚さず多くの人を傷付けた大悪党です。ウェアウルフのズル賢さは古来から知られていましたが、まさかここまでの悪事を計画するとは……大胆で恐るべし」
「全くだ。今まで強欲な人間どもが勝手に始めた戦争だと思っていたが、同胞たる獣人が首謀者だったとはな。恥ずかしいことだ。改めて謝らせてくれパトリシア。人間を無差別に毛嫌いしてすまない」
「謝らないで下さい、ヴィー。それに気付いてもらえただけで嬉しいです。でも、どうします? 宝は諦めて下さい、って言っても戦争をやめなかったら長期化しますよね。どちらにとってもそれはよくない気がします」
「だったら私が交渉に行こう。アレンと共に赴き、グラウニクとやらの企みが明るみに出れば、さすがの国王も目が覚めるんじゃないのか?」
ダルシアが言った。確かに、聖騎士と大隊長が揃って進言すれば、国王も耳を貸すかもしれない。でも、私が見た時、国王はグラウニクをとても信頼していたように思う。他の人の進言を信じてくれるかしら。
胸の中に生まれた小さな不安が、どんどん大きくなっていくのを感じる。言葉にしにくいのだけど、大きな悪意が一気に芽吹いて噴き出すような。
そんな気配がした。
「そうですね。まずは平和に対話がいいでしょう。それでダメなら、またなにか方法を考えるということで……いいですか? パトリシア?」
「えっ? あ、はい。そうしましょう」
「よろしい。では、明日の朝、ダルシアとアレンにバーディアに赴いてもらいましょう」
ティアリエスの言葉に全員が頷いた。
「全くだ。今まで強欲な人間どもが勝手に始めた戦争だと思っていたが、同胞たる獣人が首謀者だったとはな。恥ずかしいことだ。改めて謝らせてくれパトリシア。人間を無差別に毛嫌いしてすまない」
「謝らないで下さい、ヴィー。それに気付いてもらえただけで嬉しいです。でも、どうします? 宝は諦めて下さい、って言っても戦争をやめなかったら長期化しますよね。どちらにとってもそれはよくない気がします」
「だったら私が交渉に行こう。アレンと共に赴き、グラウニクとやらの企みが明るみに出れば、さすがの国王も目が覚めるんじゃないのか?」
ダルシアが言った。確かに、聖騎士と大隊長が揃って進言すれば、国王も耳を貸すかもしれない。でも、私が見た時、国王はグラウニクをとても信頼していたように思う。他の人の進言を信じてくれるかしら。
胸の中に生まれた小さな不安が、どんどん大きくなっていくのを感じる。言葉にしにくいのだけど、大きな悪意が一気に芽吹いて噴き出すような。
そんな気配がした。
「そうですね。まずは平和に対話がいいでしょう。それでダメなら、またなにか方法を考えるということで……いいですか? パトリシア?」
「えっ? あ、はい。そうしましょう」
「よろしい。では、明日の朝、ダルシアとアレンにバーディアに赴いてもらいましょう」
ティアリエスの言葉に全員が頷いた。