落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 これだけ探していないのだから、その可能性のほうが高いかもしれない。ホミのことだから、森の抜け道をいくつも知っていそうだし、誰にも会わずにこっそり帰るのは簡単かも。
「では、一旦リンレンたちには帰って確認してもらいましょうか? 私たちはあともう少しこの辺を探し……」
 希望に満ちた可能性が見えかけた時、私の目は偶然にも絶望の兆しを捉えていた。
 背の低い茂みに目をやると、そこには見覚えのあるものが落ちている。ホミのために作ったアミュレットが、無残にも千切れた状態で落ちていた。それだけならうっかり落としたのかもしれないと思うけど、違うと判断する理由がある。アミュレットには誰かの血液が付着していた。
「パトリシア、どうした?」
「これを……」
 恐る恐る拾い上げて、ヴィーに見せる。
「ホミのものか。血がっ⁉ 怪我をしているのだろうか」
「ええ。でも、ホミの姿はどこにも……」
「パトリシア、お前の魔術で探れないか? 森羅万象の力なら出来ると思うのだが」
「……あっ! そうですね! 私、うっかりしていました。やってみます」
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