落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 森羅万象なら、きっとホミの居所を探ることが出来る。世界の理から外れなければ、ほぼ万能の力なのだから。
 私はアミュレットを手に取り、願った。この森、この場所でホミに起こったことをイメージとして再現したいと。残されたアミュレットが見た真実を知りたいと。
 すると、突然、目の前に白く薄い人影が現れた。耳の長い小さな獣人ひとりと、縦長の帽子を被ったひとりの男性の人影。ふたりは揉めているようだ。獣人はホミで間違いない。男性は……グラウニクだ。
 グラウニクは、嫌がるホミを殴って押さえ付け、そのまま担いで森の外へと出ていった。
「グラウニクに……連れていかれたのだわ」
「なんだと⁉ くそっ! しびれを切らして自らが出てきたか。ホミを人質とするつもりだろうか?」
「伝説の宝と交換、ということかもしれません」
「忌々しい奴め。灰にしてやろうか……いやそんなことより、すぐにホミを奪還しに行かな……パトリシア?」
 ヴィーが、こちらを心配そうに覗き込んで来る。しかし、それに応対する余裕はなかった。ホミという家族を、奪われてしまうかもという恐怖は、私の思考を一時停止させた。
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