落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「パトリシア! しっかりしろ! ホミはまだ生きている。俺たちの助けを待っているのだ!」
 私の肩をヴィーががっしりと掴み、大きく揺さぶる。それにより、停止していた思考が動き出した。
 そうよ、ホミを助けなきゃ! 彼女はきっと私が助けに来るって信じて耐えている。私はホミの姉なのだから、信頼を裏切ったらダメだわ。
「ヴィー、ごめんなさい。もう大丈夫です! すぐにバーディアに行きましょう。朝を待っている場合じゃない。小さなホミにこれ以上怖い思いをさせられないもの!」
「その意気だ! では各所に通達の上、出発する!」
 ヴィーは一瞬で竜の姿に戻ると、私を乗せ、森の上空に舞い上がった。そして、空からリンレンとダルシアを視認すると急降下し、彼らを両手で掴んでまた飛翔する。驚くふたりを掴んだまま、ヴィーは屋敷にいるティアリエスの元へと向かった。
「ティアリエス! いるか?」
 私たちを玄関付近で降ろすと、ヴィーは周囲に響き渡る大声で叫ぶ。
「……どうしたのですか? みんな揃って」
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