落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 外門を潜り町へ入ると、灯りの正体はすぐに判明した。王都に住む住民たちが、松明や武器になるものを持ち、王宮へと行進していたのだ。波のようにうねる灯りは、強い怒りを孕んでいる。松明に照らされる住民たちの顔には憤怒の感情が見えた。
「暴動だ」
「そのようです。以前からバーディアの国民たちは、国の体制に不満を持っていましたから。強制的に徴兵したり、町の店舗を我が物顔で占拠したり……もうこれ以上我慢が出来なかったのかもしれません」
 バーディアに到着した日、食堂の女主人も困っていたわ。あれから、状況はもっと酷くなっていたとダルシアからも報告を受けている。だとすると、現状に耐えられなくなって暴動を起こしたとしか思えない。
「なるほどな。国王が自分勝手に戦争を始めて、国民が被害を被ったのだな。愚かなことだ」
「ええ。でも、この状況ならあまり目立たずに王宮門前まで辿り着けそうですね」
「では、暴動の群れに紛れるとするか」
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