落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「聖騎士ダルシア、申し出は嬉しいが、痛みを忘れたくはないのだよ。それは民が感じた痛みだからな」
「ふん……つまらないな……いてっ!」
 一言多いダルシアの足を、思いっきり踏んでやった。世界に名だたる聖騎士がこんなに性格が悪いなんて。他所の国では相当な猫を被っているのに違いないわ。呆れていると、ヴィーが言った。
「では、俺たちは帰るか。戦争は終結した。あとはバーディアの問題だ。アレンは……どうするのだ? バーディアの立て直しに尽力するというなら残ってもいいぞ?」
「いいえ。よければ、トネリの農場を手伝わせて下さい。軍人はもう廃業です。それに、民を徴兵していたオレがいては、バーディア国民の不安が払拭出来ないでしょうから」
「そうか、うん。わかった、では……」
「じゃあ、私が残ってやろう」
 突然口を挟んだのはダルシアだ。
「えっ! ダ、ダルシア、どうして? 一緒にドーランに帰らないの?」
「帰るさ。ここが落ち着いたらな。ボンクラな国王に変わって真実を説明し、民の気持ちを落ち着かせ、一刻も早く元の生活に戻す。聖騎士にはピッタリの役目だろう?」
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