落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 そもそも王様を軽々しく愛称で呼ぶなんて不敬だと思うし、なんで私にだけ強要するのかわからない。
「幻獣の国の王、いや幻獣の頂点に立つ竜を、気安くは呼べないらしい。竜(俺)は生まれながらの王だからな。だが、お前には許そう」
「はあ……竜……り、竜?」
 驚き過ぎて、私は礼儀も忘れ叫んだ。だって、竜よ? 世界中のあらゆる古書に登場する最強で最悪の存在。平原や山を焼き尽くし、大きな翼で空を舞う。その幻獣・竜が私の目の前に?
「聞いていなかったのか? まあ外から来たのなら、知らなくても当然かもしれないが……ティアリエス、あらかじめ教えておけよ」
「ふふっ。すみません。パトリシアがいい反応をするので、つい言いそびれまして」
 ティアリエスは微かに目尻を下げ、ホミと顔を見合わせた。
 うっ、それは地面が揺れた件ですか? 確かに竜の姿で思い切り着地すれば、地面は揺れる。ティアリエスとホミは原因が王様だと知っていて、面白がっていたのね。
「で、パトリシア。呼んでくれるよな?」
「えっ、ええと、あの、それは……その……」
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