落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 圧の強い王様を前に、私は口ごもる。助けを求めようにもティアリエスもホミも救護所のみんなも、ニヤニヤしているだけでなにも言わない。でも、ここで安全に暮らすには、王様の意見に逆らうわけにはいかない。うまくご機嫌をとっておかないと、私の身が危うい。
「で、では、ヴィーと呼びます」
「よし!」
 王様改めヴィーは、大きく頷くと笑顔になった。これが世界中から恐れられる竜? 伝説と違って優しそうなんだけど……。
 伝聞と実際の落差に驚きながらも、私は危機を回避してほっとしていた。
 
 用事を済ませると、私とホミは救護所をあとにした。
 帰る直前に「明日の夜も必ず来い! 約束だそ!」とヴィーに念を押されたけれど、なにか用事でもあるのかしら?
 そうホミに尋ねてみると、変な答えが返ってきた。
「お姉ちゃんがめちゃくちゃ綺麗だったから、好きになったんじゃないかなあ」
「……は?」
 理解するのに、しばらく時間がかかった。それほど、信じられないことをホミが言ったからだ。
「それは違うでしょう? 私、綺麗じゃないよ。地味で才能のない落ちこぼれだもの」
< 45 / 264 >

この作品をシェア

pagetop