落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「そう。ドーランにもあるのかしら」
「同じではないですが、似たようなものならあります。いわゆる魔除けというもので、悪いことが起こらないようにと玄関に付けたりとか……」
 言いながらリンレンは玄関を出て外に行き、なにかを持って帰ってきた。
 それはギザギザの葉っぱが付いた植物の枝を、同じ長さに切り揃え、ひとつに束ねたものだった。
「これです。ヒイラギという植物をこうして玄関に飾ります」
「なるほど。古くからある慣習的なものね。私の作るアミュレットは少し違っていて、込める願いによって効能が違うの。形状はこんな感じ……ほら、見て?」
 今度はこちらがアミュレットを見せた。それは、ライガンが作成し私に初めて見せてくれた思い出のアミュレットである。
 師匠ライガン曰く「アミュレットは自分のために作成するものではなく、他の誰かのために作るもの。誰かの無事を祈り、幸せを祈ることが重要である」と。
 その教えを守り、私は自分のためにアミュレットを作ったことはない。作ろうと思ったこともない。ただひとつ、このライガンのアミュレットだけが私の護り。「幸運」が込められたアミュレットであった。
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