落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 ドーランに来た時から気になっていたけれど、みんなおしゃれな服を着ている。ホミは薄紅色のドレスに真白なエプロン。リンレンは色鮮やかな浅黄色のシャツに、クリーム色のベスト。この国は良質な綿花だけじゃなく、紡績や染色技術も進んでいるらしい。
「昨夜トネリさんに会いましたよね。実は彼の農場で綿花を栽培しているのです。奥さんのマゴットさんが糸を紡いで、それを織機で製織して生地にします。この国の住民の服は、全部そこで作っているのですよ」
「へえ、そうなんだ。じゃあ糸を分けてもらえるか、お願いしてみるのがいいわね」
「トネリさんもマゴットさんも気のいい人だから、きっと協力してくれますよ!」
 ちょうど薬草を詰め終わり、私たちは出掛ける準備をした。
 行先はもちろんトネリ夫妻の農場である。

 朝日に照らされたドーランは、夜の風景とは打って変わって牧歌的だった。
 夜には見ることの出来なかった畑や小川、大きな風車や水車小屋が遠くに見える。夜も幻想的で素敵だけど、朝のドーランの風景は希望に満ち溢れ、今日も一日元気で頑張ろう、という気持ちにさせてくれた。
< 51 / 264 >

この作品をシェア

pagetop