落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「火口の内部にはなんでも願いを叶えてくれる宝物があるらしいです。まあ、伝説なので本当ではないでしょうけど」
「ふうん。でも、なんだか夢があっていいわね!」
 願いを叶えてくれる宝物だなんて、幻獣の国ドーランならではの夢物語だわ。ライガンが聞かせてくれた物語や神話、古書にも載っていない伝説に、私の心は躍った。
「見えてきましたよ。ほら、あれがトネリさんの農場です」
 リンレンの指差す先には、緑の屋根の大きな家があった。二階建てで横に広く、近くには小屋がふたつある。たぶん綿花を収穫する農機具を置いているのだろう。
 リンレンとホミに手を引かれ、私は農場の中道を進んだ。兄妹は勝手知ったる我が家のように、真っ直ぐ母屋へと向かっていった。
「おはようございます。トネリさーん!」
 入り口で立ち止まり、リンレンが挨拶をする。今気付いたのだけど、人を訪ねるには少々時間が早い。朝御飯中だったら迷惑かもしれない。と思ったけれど、トネリは笑顔で玄関に出てきた。
「おう、リンレンにホミ……と、パトリシアか。どうしたんだ?」
「早くにすみません。ちょっと相談があって。話を聞いてもらえますか?」
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