落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 案内された部屋には、使い込まれた大きな糸紡ぎ機一台が中央に鎮座していて、周りには真新しい綿花の山があった。
「糸の太さはどのくらいのものがいいの? 出来れば現物を見せてもらえると分かりやすいのだけど」
 マゴットが言った。私がライガンのアミュレットを見せると、ふんふんと頷いたマゴットは見本の束から一本の糸を取り出した。
「これくらいがいいかしら。細すぎても作りにくいし、太いと全体が大きくなるから」
「そうですね。私がアミュレット作成に使っていたものと太さは大体同じです」
 そう、太さは同じだった。だけど、決定的に違うところがひとつある。手触りだ。滑らかで柔らかく、繊維がとても美しい。きっとトネリの農場の綿花の質が、人間世界の綿花よりも格段に高品質な上、マゴットの糸紡ぎの腕がいいのだろう。
 これなら、とてもよいアミュレットが作れそうだ。
「じゃあこれで決まりね。あとは色なのだけど、うちで扱っているのは七色なの。それで足りる?」
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