落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 しかし、夢物語のような明るい未来は、必ずやって来ると思えてならなかった。
 
 次の日、私とホミは迷いの森の入り口近くまで薬草を取りにいった。いつも救護所で飲んでいる薬草茶は、ちょうどその辺りで採取出来るらしい。
 ドーランに入国した日は夕暮れで、辺りはよく見えなかった。しかし、今は朝。朝露に濡れた草原がキラキラと輝く様子は、生命力に溢れてとても神秘的だった。
「ホミ、これで合ってる?」
 草原にしゃがみ眼前に生えている草を指差して問う。一応事前に葉の形や特徴を教えてもらっていた。しかし、たくさん草木が生い茂っていると、不思議なことにどれも同じに見えてしまうのだ。
「あ、それは違うよ。こっちのやつね」
「う……ごめん。気を付けます」
「えへへ。ここではあたしが先生みたいね!」
 ホミはふんぞり返る。可愛いその様子についつい口元が緩み、幸せな気持ちになった。
「そうね。では、ホミ先生、薬草採取を開始します」
「はい、パトリシアさん、頑張って下さい」
 顔を見合わせ、私たちは大声で笑った。
< 86 / 264 >

この作品をシェア

pagetop