落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「あ、いえ。少しわかりにくかったようですね。コホン、言い直します。乱戦になり、また大怪我をするかも、と覚悟したところ、突然このアミュレットが光り出しました」
 ファルは腰に付けたアミュレットをこちらに向けた。
「すると、我々の体にうっすらと光の膜が纏いました」
「光の膜、防壁のようなものかしら……では、多少なりともアミュレットがお役に立ったということですか?」
 確か、込めた願いは「物理攻撃カット」と「防御力向上」。
 それがうまく働いてくれた、ということね。ほっと胸を撫で下ろすと、興奮冷めやらぬといったファルが速射砲のように言った。
「お役に立った、どころの騒ぎじゃありません! このアミュレットの力を目の当たりにし、バーディア兵はすぐさま撤退していきました。剣を打ち込むと弾き返し、矢を放つと直前で折れる。そんな我らに恐怖を覚えたのでしょう! しばらくは森への侵攻も止むかもしれません」
「そっ、そうですか。そんなに効果があったのですね……そうですか、そんなに」
 私は努めて冷静に微笑み返した。
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