落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 しかし、内心はびっくり仰天、叫び出しそうになっている。剣を弾き返して、矢を直前で落とす? それは、私がアミュレットに込めた思いを上回る効果だ。そうなればいい、とは願ったけれど、まさか、こんな桁外れな効果があるなんて。
 トネリ農場の綿花の力? それとも、マゴットさんの紡いだ糸が素晴らしかった? 私の技術や魔力は変わっていないと思うから、きっとそのどちらかね。
「とにかく! このアミュレットはすごいのです。一刻も早くそのお礼を伝えたくて走って来ました! では、我らはこれで!」
 ファルが颯爽と頭を下げると、後ろの獣人たちもそれに倣う。
 そして、足並みを揃えて町のほうへと去っていった。
「ふう……なにはともあれ、アミュレットが効いてよかったわ」
「やっぱりパトリシアお姉ちゃんのアミュレットはすごいんだねえ」
「想定してなかったけどね」
 きらきらと尊敬の眼差しを向けるホミにおどけて見せると、私たちも家への帰途に就く。予想外ではあったものの、警備隊の人たちが怪我をしなくて本当によかった。それに、アミュレットに効果があるとわかれば、町の人から作成の依頼があるかもしれない。優しい兄妹の大切なお店の修繕費用を稼ぐためにも、ファルたちには宣伝してもらわないとね。
 と、呑気に考えていた私は、翌日、思いも寄らない事態に見舞われるのを、まだ知らなかったのである。
 
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