落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ～絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き～

　リンレンは椅子から立ち上がり、店舗へと移動した。私とホミは急いで朝食を食べ終えて、店舗のほうに聞き耳を立てる。するとしばらくして、リンレンの声と高く滑らかな女性の声が聞こえてきた。ホミは耳をピーンと立てて頷くと、得意顔で言った。
「マインさんが来たみたい」
「マインさんって……あ、近所の人ね」
　救護所に行く道すがら、ホミから教えてもらったのだった。この家のすぐ下にあるこぢんまりとした家屋。そこに住んでいる狐の獣人で、若夫婦とお爺さん、ホミと同じ年くらいの男の子の四人家族であるらしい。
「うん。なんだろうね？　こんなに朝早くに来るなんて珍しい……あ、こっちに来る」
　ホミは居住まいを正し、口の端をクロスでさっと拭いた。その可愛い様子を眺めていると、リンレンとキツネ耳の細身の女性がやって来た。
「おはよう。お食事中にごめんなさいね」
　女性は申し訳なさそうな顔をした。色白の彼女はきりっとした美人で、意志の強そうな瞳が印象的である。
「パトリシア、この人はマインさん。アミュレット制作のお願いに来たらしいです」
「えっ、アミュレットを、ですか？」