落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「はい。ご注文ありがとうございます」
「ふふ。リンレン、あなた、ルルドさんに似てきたわね。しっかりしているわ」
「え? あ、そうですか?」
 父親に似てきたと言われ、リンレンは少し恥ずかしそうだ。でも、嬉しそうでもある。尊敬している自慢の父親だもの、嬉しくないわけがないわ。
 満足そうなマインが帰ったあと、リンレンは台帳を取り出し開いた。その台帳には、几帳面な文字がびっしりと書いてある。恐らくこれはルルドの使っていた台帳だろう。
 台帳に日付、品物名、購入者を書き終わるとリンレンが言った。
「こうやって書いておくと分かりやすいですからね」
「うん、ありがとうリンレン。全部任せてしまってごめんね。私、なんにもわからなくて。それで、十フィンってどのくらいのものなの?」
「うーん、そうですねえ。わかりやすく換算すると、葡萄酒五本分くらいでしょうか」
「五本分?」
 と、驚いてみたけれど、実際よくわからない。でも、人間世界での葡萄酒は結構貴重で、当たり年によっては、貴金属と換金されるほどだった。ドーランでの価値は不明だけど、安くはないはずである。
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