信じていた···疑う事も··なかった
帰らない妻

マンションに着き玄関を開けるが····
やはり、誰もいない。

部屋に入るがそわそわと落ち着かずに
リビングを無意識にぐるぐると。

何をやっているのだろう
と、ソファーに腰を下ろすが
ゆったり座ることが出来ずに
背筋を伸ばして座る
自分がおかしくて情けない。

着替えも出来ずに
ただ、ただ、座っているだけ

そこに
ブー、ブー、と携帯の着信音

慌てて携帯を取ると
北山さん。

力が抜ける·····出ることなく
携帯をテーブルに置く

切れては、かかるを繰り返す
携帯·····

だが····しばらくすると
携帯は静かになった。

それを見てホッとする
俺はなんて身勝手なんだと思う。

だが、11時、12時過ぎでも
沙良は、帰らず1時になり2時になり
3 時になっても帰らない沙良

もうこのまま
帰って来ないのでは?
と、不安になり
ラインをしたりメールをしたり
電話もならす。

ラインやメール、着信音で
俺の存在を思い出して欲しい

それを願って······

だが·····ソファーに座ったまま
寝てしまったようで
アラームで目が覚めた。

すぐに沙良の部屋に向かうが
沙良が戻った形跡は
なかった。

今日は、金曜日
仕事に行かないと行けない。

無理矢理身体を動かして
シャワーを浴びて
着替えをして?

クローゼットの中の沙良の服が
少ない様に感じる

沙良のお気に入りのスーツがない。

「勝負の時に着るの。」
と、言っていたスーツ。

沙良を溺愛する
沙良のお父さんがオーダーメイドで
作ってくれたらしい。

体型の変わらない沙良は、
そのスーツがお気に入りだ。

それが·····ない。

だけど······俺と一緒に行き
俺が選んだコートは
クローゼットの中に
置き去りにされていた。

それに俺がお土産だと言って渡した
ハンドクリームも
俺が寝るベッドのサイドボードの上に
置いてあった。

まるで····要らない、と言われてる
ように。

もしかして·······

それからも
何度も、沙良の携帯に連絡をした。
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