信じていた···疑う事も··なかった
終わりにする
朝 職場に着くと
俺を見つけて北山さんが近づいてきた。
「北山さん。おはようございます。」
と、言った俺に
「あっ、高木係長
おはようございます。」
と、言った後に小声で
「電話したんですよ。
先に帰られて寂しかったです。」
と、言う北山さんに。
「すみません。」
と、だけ言って
仕事の準備を始めると
立っていた北山さんも
自分のデスクに戻った。
その後姿を見てホッと
している自分がいた。
だが····北山さんには
話をしないと行けないと思うが····
沙良の事が気になって仕方なかった。
北山さんと食事をしているときには
頭にもなかった癖に。
仕事をバタバタと片付けて
昼休みに北山さんを
近くの公園に呼んだ。
「食事に行くのは
昨日を最後にします。
試験についてもこの半年
北山さんは頑張っていたから
問題ないと思います。
でも安心しないで
頑張って下さい。」
と、言うと
「えっ、なぜですか?
高木係長と食事に行けるから
頑張っていたのに。
奥様に何か言われたのですか?
それでしたら、勉強を教えて
頂いてるだけです。
と、私からお話しをします。
ですから·······
「いえ!!
妻からは何も言われていません。
これは私の意志です。」
と、少し強く言うと
北山さんは、目に涙をためながら
「···わかり···まし··た···。」と。
そんな彼女を見て
胸が苦しくなった。
泣かせたいわけでは····なかった·····が··
今日は、仕事が終わってから
真っ直ぐに帰り
沙良の帰りを待つ。
だが·····
その日も沙良は、帰らなかった。